本格始動と新年 Ⅷ´
「えっと、祖父はダニエル・オイラー――」
「ダニエル軍曹のお孫さん!?」
「は、はい……そう、です」
ちょっと待て、この前(25年以上前)『俺には妻と息子がいる。こんな所で死ぬ訳にはいかないんだよ』って言ってた人にもう孫がいるの!?
怖い……時の流れの早さ、怖い……
というか年寄り扱いするなとか言っておいて、本当にお爺ちゃんやってるんかい!!
「――なるほど……だが、それなら前線の怖さは、お爺さんから聞いているだろ?何故パイロットに?」
「わ、私は怖いよりも戦ってた時の話を聞いて、そんなおじいちゃ……じゃなくて。祖父に憧れて。だから
ルーナは目をギュッと瞑り、チグハグだがハッキリと自分の想いを口にした。
そんなルーナをヴェルルは無言でよしよしと撫でる。
あのガハハ!と笑う人と同じ遺伝子が入っているとは思えない健気さだ……
「アスト艦長、そろそろミーティングルームへ」サラ副長が時間を気にしながらアストヘ声を掛ける。
「分かった。2人共行こうか」
アストとサラ副長はヴェルルとルーナを連れ、アルキオネのミーティングルームへと向かう。
アストはミーティングルームに着くまで、少しでも打ち解けようと話し掛ける。
「ダニエル軍曹は、まだ入院中か?」
「そ、そこまでの怪我ではなかったので既に退院しています……」
「そうか、良かった」
打ち解けようにも会話が続かない。
なんというか、孫がいた事にも驚いたが、あのダニエル軍曹が可愛い孫娘が見す見す軍人になる事を許すイメージが湧かない。
相当の覚悟を持ち、説得した上でここまで来たのだろう。だが、どうにも一兵士として色々扱い辛いな……
そう思考を巡らせながらミーティングルームの自動扉を開ける。
「――アリーチェ中尉は
DD部隊の面々の前に、一花にも引けを取らない程に踏ん反り返る赤髪ツインテールの少女がミーティングルームの1番奥で仁王立ちしていた。
部屋間違えたか?いや、そんな筈はないアルキオネの構造は身体に染みついている!
と思いながらも表示されている部屋の名前を素早く確認する。――当然間違えていない。
「えっと……何事?」
「ヴェルルにルーナ!何処に行ってたのよ?!少し探したんだから!」赤髪の少女は凄い剣幕でこちらへ近づくと上目遣いでアストヘ尋ねる。
「天音アスト艦長!アーシア・アリーチェ中尉は何処にいるのかしら?」
「あー、アーシアなら今は第2艦隊へ異動したが――」
「異動?嘘……」
「それに昇進して、今の彼女は大尉だ」
「大尉?……折角彼女がいる部隊へ志願したのに……第2部隊か」
アーシアが不在な事を知り、先程までの勢いが嘘の様に項垂れる。アストはそんな彼女に一声掛けようとしたがサラ副長が「あまり時間が無いので」と全体の時間を優先する。
「すまないがミーティングを始める。ヴェルル、ルーナ、彼女を頼んだ」
「分かった」
「は、はい!――クリスちゃん、行こう?」
クリスって言うのか……あそこまでショボくれるのはアーシアと何か接点があるからか?
だがそれは後回しだ。この部隊の本格始動まで時間が無い、やれることは限られている。
アストは気持ちを切り替え、新たなDD部隊全員の前に立ち今後の部隊の編成や方針決める為、まずはここに集まった彼女達に自己紹介をさせるのだった。
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