本格始動と新年 Ⅷ
北暦291年
ケプラー日時 1月1日 10:00
第2超巨大コロニー グリーゼ 宇宙軍工廠 第8ドック
「諸君は本日より完全独立部隊アサナトスへ入隊する。本来の予定よりも早い配属となった――」
整備されているアルキオネを背にアストの目前には新たに配属される面々がずらりと並ぶ。その中にはゼノビア、リュドミラ、ザヴァリィ、ジョセフィーヌの姿も見えるが、他の艦隊から異動してきた者、宇宙軍工廠の技術士そして士官学校を卒業後に配属予定だった者達も立ち並んでいた。
「理由としては12月25日 22:10頃 グリーゼヘ輸送中だった物資が
アストの説明を遮る様に昨年まで訓練生だった者達がザワつく。
「アルキオネって月末まで整備中じゃ?」
「しかも
「初陣が人間相手かよ?」
「そこ、黙りなさい」
動揺する新兵達をサラ副長が一括すると静まり姿勢を正したが、不安の色が表情に残る。
そんな彼等にアストは声を掛ける。
「出航までの数日と目的宙域へ到着するまでの期間、諸君がアルキオネの一部になれるように様々なことを心と身体へ叩き込んでもらう。厳しい言葉に聞こえるだろうが実戦から生きて帰りたければクルーが一丸となり苦難を超えていかねばならない。短い期間しかないがアルキオネという環境をできる限り把握し、今回の任務を無事乗り越えよう」
新兵以外の隊員達が一斉に敬礼し返事をすると、それに合わせるように新兵達も行動を真似し敬礼と返事をした。
「各自、訓練を開始。DD部隊は一度ミーティングルームへ移動してください」
サラ副長が指示を出すと全員が駆け足で移動を開始した。
やっぱりサラ副長の方が皆んなシャッキっとするなぁ
「――ん?」
全員が移動したと思ったが、2人の少女がポツンとその場に何故か残った。
銀髪の少女はアストをじっと見つめ、もう一人のおさげの少女は銀髪の少女の袖を優しく引っ張りオロオロとしている。
ヴェルルと……新兵の子かな?
「どうしたんだ?」アストは2人に歩み寄る
「ほ、ほら。ゔ、ヴェルルちゃん。ミーティングルームへ行かないと怒られちゃうよ?」
「大丈夫。ご無沙汰しております。グランドマスター」
「ぐ、ぐらんどますたー?」
「ヴェルル、そのグランドマスターって呼ぶの止めて欲しいな。呼ばせてるみたいで恥ずかしいから」
ヴェルルは首を小さく傾げ「じゃあ……アスト?」と尋ねる。
アストは「グランドマスターよかマシだな」と名前で呼ぶことを了承した。
「あ、あの、えっと……2人はどういうご関係で?」怪しげな2人の関係に、蚊帳の外だったおさげの少女が勇気を出して質問する。
「ヴェルルとは別にそこまで――」
「アストは、マスターのマスター。つまりグランドマ――」
「あはは、君もDDのパイロットかな?」
アストはヴェルルのややこしくなりそうな説明を遮り無理やり話題を変えた。
「あ!も、申し遅れました!ルーナ・オイラーです!祖父がお世話になっております!」
「……祖父?」
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