深紅と白銀 Ⅰ
北暦291年
ケプラー日時 1月1日 10:42
アルテミス級 5番艦 アルキオネ ミーティングルーム
率先して自己紹介を始める者がいるのは有難い。
「では、私から。ゼノビア・マルティノスです。私を含め、こちらの3名はサクラメント・エレクトロニクスに勤めています。また現在は、天音アスト艦長の秘書及びDD部隊へ所属となりました。アスト艦長へご用件の際は気兼ねなく、私達4人にお声掛け下さい。よろしくお願い致します」
「リュドミラ・スミルノフ。ゼノビアの紹介の通り秘書兼DDパイロットとして所属します。――あ、狙撃が得意です。よろしくお願いいします」
「ザヴァリィ・カーメネフ。近接戦が得意、任せて。」
「マリー・ジェンナ・ローサルト・タシェ・ドーラ・ボアルネと申します。皆様、私の事は是非ジョセフィーヌとお呼び下さい。アスト様――いえ、アスト艦長の秘書でDDのパイロットも務めます。よろしくお願い致します」
場数の多い女性陣の挨拶が終わる。続けて気になる新兵達の挨拶だが――
チラチラと二人を見た後に「る、ルーナ・オイラーです!」と思い切って挨拶を始める。
「アルキオネには志願して配属させていただきました!よ、お願いいします!」と言うと勢いよくお辞儀をした。
「クリスティアナ・ジゼル・タチバナ。クリスって呼んでくれて構わないわ。よろしく。」
「ヴェルル・デ=グロートです。よろしくお願いします。」
ヴェルルが短い自己紹介で終わることを予想していたアストは補足を入れる。
「ヴェルル・デ=グロート少尉だが、彼女には専用機がある。その為、彼女の機体を主軸とした作戦は少なくはないだろう。と思っている。そして機体を熟知しているサクラメントの技術者をアルキオネへ整備班として数名所属――」
「何よそれ?ヴェルルが隊長ってこと?」クリスが眉間にシワを寄せアストを睨みつける。
噛み付いてくると思ったよ……
「いや、後で言おうと思っていたが隊長は現段階ではゼノビアだ」
「秘書さんが隊長?本当に大丈夫かしら?――それに秘書さんを隊長にするにしてもジョセフィーヌさんの方が強そうに見えるけど?」
「あぁ、1週間程彼女達の訓練を見てきた。その結果ゼノビアが適任だと、俺は判断した。今後、彼女以上に適任だと思った者がいれば
「じゃあなんで、隊長でもないヴェルルにだけに特別な機体があるのよ?」
「今の段階では、彼女は特殊な訓練を受けています。ってことしか言えないな」
「秘書が隊長、私とルーナと同じ新兵のヴェルルにだけ何故か専用機体…………ふざけてるわ。まぁ、アーシア・アリーチェのいないこの
そう言うと彼女は特徴的な赤い髪を払い、
「クリスちゃん?!だ、ダメだよ!」とルーナが引き止めに行くも、あの様子では戻ってこないだろう。
まさか、こんなにも幸先が悪くなるとは思わなかった。
「地雷、踏みまくったなぁ……」
「彼女には私からも話をしますので、アスト艦長は続けて下さい」
サラ副長はそう言うと2人の少女を追う。
「そうは言われても。この空気じゃミーティングは一旦中止かな」
残った秘書4人も苦笑をし、ヴェルルは瞬きをパチパチとするだけで、相変わらず呆けた様な表情のままだった。
アストは「仕方ない……」と呟くと、新兵3人の情報を端末で再度確認する。
なるほどね……
「先手を打っておくか」
アストはフローレンスに連絡を取る。
「――難しいかも知れないが、頼みたいことが2つある。5日で仕上げて欲しいんだが――」
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