本格始動と新年 Ⅱ
北暦290年
ケプラー日時 12月25日 18:25
第2超巨大コロニー グリーゼ 軍用道路
颯爽と1台の軍用車が薄暗くなりつつある専用道路を走行していた。
後部座席では女性陣が向かい合って座り、キャッキャと話に花を咲かせ、運転手の女性も雑談に混ざり度々笑った。
唯一男性のアストはなるべく会話を聞かない様に助手席から窓の外を眺めていた。
視界の限り延々と続く鉄格子。その背景には巨大な軍事施設が建ち並んでいる。
たまに広告やら施設名の看板が通り過ぎ、外が一定の暗さになると街灯が一斉に点灯した。
その約5分後、ライトアップされた
【サクラメント・エレクトロニクス専用格納庫→】
という大きい看板が見え、軍用車は迷うことなく右折し正面ゲートを潜って行く。
ここが目的地か、サクラメント……どこかで見たような字面だな。
軍用車は巨大な格納庫の扉の前で停車する。運転手を残し全員が下車すると一花司令が「あなた達はここで待ってて、この格納庫の扉を開けさせるわ」と足早に格納庫の隣の施設へ入っていった。
「本当に秘密結社みたいで格好良いね!」
「よるなのがポイントたかい」
「秘密結社がこんな大っぴらに格納庫の扉を開く訳ないでしょ……」
「でもまぁ、思ってたよりスケールがデカいな」
少しの間待機していると、格納庫のランプが点滅しブザーが鳴った。巨大な左右10枚の扉が中央からゆっくりと左右に開いていく。
さて、新兵器か何かのお披露目か……だが聞いたことのない企業だ。あまり期待はしないでおこう。
薄暗い格納庫の内部が見えてくると、床に設置された誘導灯が手前側から、カシャン カシャン カシャン と一定の感覚で点灯していく。
アストは自分の目を疑った。
そこには数百人の黒い制服を着た女性が背筋を正し、中央へ向かい合うように並び立っていた。そして最深部には腕を組む一花司令とその隣にもう一人黒衣を羽織った女性の姿が見える。
「秘密結社みたいだ……」
アストは思わずそう呟くと、吸い込まれるように格納庫へ一歩踏み出した。他の4人も続く様に中へ入って行く。
格納庫へ踏み入れた瞬間に出迎えてくれている女性たちが一斉に一定の角度でお辞儀をした。
その光景に驚き左右を見渡すと彼女たちの後ろには見たこともない
まるで謁見の間だ。俺たちはいつの間にか勇者一行になってしまったらしい……
そして腕を組み、踏ん反り返っている一花司令が口を開く
「どう?驚いたかしら?」
「いや、何が何だか分からないんですけれど……」
アストの微妙な反応に、隣にいる女性が親しげに一花司令へツッコむ。
「え……?
「その方がサプライズで面白いじゃない!」
「呆れた……そりゃこんなに人が並んで、急にお辞儀したらビビるわよ」
「フロルもその方が格好良くて喜びそうって言ってたじゃない」
「いや、それは
サプライズを仕掛けた2人は互いを
おい、待て待て待て……俺はこの2人のやり取りを知ってる……!
その光景は、突然アストの数十年前の記憶を引き摺り出し、思い当たる2人の名を無意識に呟く。
「"九条"とフローレンス?」
自分が呟いたその名にかつての光景が重なり確信する。
間違いない……16年前、アルキオネのDDパイロットだった2人のやり取りだ。
ちょっと待て……頭が混乱してる……一花司令が、九条一花?
それで彼女がフローレンス?
「正解だよアスト、久しぶりね!――あ、大佐に昇進したんでしょ?おめでとー」
「少し待ってくれ、情報が多すぎて何が何だか……」
「――もしかして
「いつか思い出してくれればいいかなーと思って……」
「うわぁ めんどくさ……」
2人はまた言い合いを始めると、サラ副長が上手く断ち切ってくれた。
「申し訳ありません。そろそろ御説明していただけると有難いのですが」
ありがとうサラ副長……君が今後も一緒で本当に助かるよ……
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれたわね!――今後、彼女達、"サクラメント・エレクトロニクス"は 我々、完全独立部隊アサナトスの傘下に入る事になったのよ!」
先程の勇者一行というのは訂正しよう
どうやら俺たちは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます