本格始動と新年 Ⅰ´
北暦290年
ケプラー日時 12月25日 15:59
第2超巨大コロニー グリーゼ 完全独立部隊アサナトス軍事施設
アストは16:00丁度に着くようにサラ副長と共に司令官室前まで来ていた。
何故だろう、開く前から少し気配を感じる。
中に入ろうと声を掛ける前に右後ろにいるサラ副長へ視線を向けると、瞳を閉じて、どうぞと入るように促される。
怪しさしか無い雰囲気にアストは少し苦笑いすると自動扉横のカメラへ「天音アスト、サラ・ブラウン入ります」と声を掛け、扉が開いた。
「おめでとうございまーす!」
「おめでとー」
「おめでとうございます」
「――なっ!?」
クラッカーの音が5~6回鳴り、アストはその面々に少し驚いた。
「お前たち!?なんでここに?」
アーシア、ソフィア、リリアの3人がアストを笑顔で迎えた。
「なんでって昇進祝いですよ!」
「大佐への昇進おめでとうございます」
「たいさ、かっこいい」
その奥では拍手をする一花司令が「驚いたでしょ?」と笑う。
「そりゃ、驚きましたが…3人とも配属先でやることがあるんじゃ?」
「勿論!やれるところまでは終わらせてきましたよ」
「私とソフィアは艦隊の人員が揃うまで、あまりやることはないですね」
「えぇ?!そうなの!?私、挨拶やら書類提出やらで毎日クタクタだよー。エルキュール提督にも挨拶したけど……渋くて、おっかない感じだった」
「第2艦隊は手練れ集団な上にお堅い奴が多いからな……俺もあの人は苦手」
「わたしはライアンたいちょーにあったよ」
「ライアン?もしかしてライアン・キャンベルか?」
「うん。アスト、しってるの?」
キャンベル……生きてたのか
「――まぁ、昔ちょっとな。しかし隊長ってことはまだDDに乗ってるってことか?」
「マイル・ゼロってやつに のってるって」
「ハハ…… マイル・ゼロか、久々に聞いたよ。まだあの機体に乗ってるのか、相変わらずだな」
まぁ、23年間もアルキオネに乗ってる俺が言えたことじゃないか……
「あのひとすごいんだ?」
アーシアもリリアも目を合わせ、知らない様な素振りをした。
「知らないのか?俺の世代じゃ知らぬ者はいない最強のDDパイロットだったんだが」
「そうなんだ?――ふつうのおじさんだった」
アイツが普通のおじさんね……ジェネレーションギャップってやつか
「さて、飲み物とお菓子もあるわ!皆んな楽しんで!18時になったら次の場所へ行くから」
一花司令は用意していた飲み物を皆んなに配る。
「ありがとうございます――次の場所ってどこへ行くんです?」
「行ってからのお楽しみよ!だけど人を待たせているわ。まぁ、アイツだけならいくら遅れたって良いのだけど、数人待たせているから時間通りに行かないと申し訳ないわね」
サラ副長へ視線を向けると、私も知りませんと言う表情だ。
色々よく分からない
「なるほど……」
「兎に角!皆んな昇進おめでとー!かんぱーい!!」
「「かんぱーい!!」」
皆んな数週間前までしんみりしていた。だけど新しい環境が忙しいお陰か、気持ちを切り替えれている様だ。
彼女達の笑顔を見ながら手元の缶ジュースを一口飲む。
――ん!
口の中に炭酸がシュワリと広がる。
これコスモコーラか、パッケージが変わってて気づかなかった。久々に飲んだけど美味いな……たまにはコーヒー以外も良いもんだ。
早くも新しい環境の愚痴を言い合う、それを聞いた皆んなが笑い、励まし、また笑い。そんな事を繰り返していると、あっという間に時間が過ぎた。
お菓子やジュースだけの簡易的なパーティだが、一花司令の粋な計らいで恐らく彼女たちとの最後の団欒を楽しく過ごすことができた。
「そろそろ、時間ね。これから私達は、ある秘密結社(普通の企業)の格納庫へ向かうわ!」
「ひみつけっしゃ……かっこいい!」
「私達もついて行っていいんですか!?」
目を輝かせ一花司令に詰め寄る2人の後ろでリリアはやれやれと頭を抱える。
「勿論よ!だけど今日のことは口外禁止!トップシークレットだからね!」
「了解!」「りょうかい!」
リリアはジト目で「子供ね……」と溜息を吐いた。
俺と過ごしてきた中で2人が1番しっかりした敬礼姿勢をとる。
その光景にアストは少しコスモコーラを「グフッ」と吹き出しそうになる。最初は面白かったが少し複雑な気持ちになった。
2人と一花司令は、ほぼ初対面みたいなもんだが何故か気が合うようで、まるで3姉妹の様だ。
しかし秘密結社って一体
「どこへ行くのやら……」
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