再会と新世代 Ⅴ
接敵したアーシア対エリオットの戦いは思っていた以上に白熱していた。
両者は、ほぼ同時に相手を捕捉したが、最初に仕掛けたのはエリオットだった。
先手必勝と言わんばかりに盾を構え突撃し、盾を叩き付けようと振り回すも、ヒラリと交わされた。
手堅く盾で身を守りながら小型小銃を取り出し正確な牽制射撃をするエリオット。
対して、地面から突き出た岩や、無重力で浮いた周辺の岩の破片を活かし、A装備のトワソンの機動力を試すかの様に縦横無尽に躱し続けるアーシア。
お互い隙を見計らいながらの小型小銃での撃ち合いは、制限時間の半分を要した。
エリオットの残弾が先に尽きると、「待ってました!」という声が聴こえてくるかのように、アーシアのトワソンは素早く抜剣し、身動きが取れないように射撃しながら詰め寄った。
そこからは怒涛の接近戦だった。
卓越した二人の操縦技術はまるで生身の人間同士が戦っているかのような滑らかな応酬。何度もぶつかり、防ぎ、躱すを繰り返す。
装備では盾を持ったエリオットの方が優勢に見える。
だが、余裕の無いように見える攻防のほんの僅かな隙を突き、アーシアは小型小銃の銃口を相手のメインカメラに向ける。
それは1度ではなく2度目、3度目と、まるで「ここに隙がありますよ」と教えているようだった。
だがそれを撃たせまいと瞬時に盾で銃口を弾き、照準をズラすエリオットもなかなか筋がいい。
例え実戦経験がなくとも、あれだけ上手くDDを乗り
反応速度が良いからこそ、お互いの決定打を何度も捌き合い続ける。こういう拮抗した勝負で勝てるのは予想外で型破りな動きをする方だ。
だから――最後は思っているよりも呆気なく終わる。
そう、いつの時代も"エースパイロット同士"の対決は――
「中々見応えがある」
***
「コイツ、強い!!」
訓練生同士での対決では終始余裕のあるエリオットだが、今回ばかりは少しずつ余裕が無くなり、焦り始めていた。
どの角度から打ち込んでも反応してくる……いつもなら
それにこの一々銃口を向けてくるのも、構えるばかりで――
「いい加減!しつこいぞ!!」
相手が突き付けてくる銃口を盾で弾き飛ばし、すかさず攻撃を繰り出すも相手の近接武器に防がれる。
畜生!何度この同じ攻防を繰り返す!?
再び小型小銃を構えようとした相手に合わせ、メインカメラを護る様に盾を構える。
「どうせ撃たないのなら!!」
痺れを切らしたエリオットはスラスターペダルを思い切り踏み込み、体勢を崩そうと相手の懐へ盾を叩き込もうとする。
そうきたかー。でも、無重力なの忘れてる?
それなら――
「面白い技、見せてあげる!」
アーシアは巧みな操縦で180°側転し、上下逆さまになった。
突撃したエリオットの盾が、突如目の前に現れたトワソンの脚先へ追突する。
「――何!?」
その衝撃で逆さまから ぐるり と元の上下へ体勢が戻ると、丁度よく通過したエリオットの背後を取った。
「そんな……馬鹿な!?」
アーシアは小型小銃で無防備な背部の推進器を全て撃ち抜き、無重力空間での行動を不能にした。
「えへへー。私の勝ち!」
「嘘だ……こんなふざけた戦い方に、この俺が!?」
エリオットのトアソンはAI Dが機体の破損状態を感知し、模擬戦場の通信室へ状況を自動送信する。
勝敗が決したと判断され、終了のサイレンが鳴り、同時にアーシアのコックピット内タイマーが停止する。
Time Left ――1’40”22
アーシア・アリーチェ中尉、天衣無縫、天真爛漫。そんな言葉が似あう彼女が、俺のDD部隊の"エースパイロット"だ。
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