新たな部隊と舞台 Ⅰ´

北暦290年 

ケプラー日時 11月11日 22:46

アルテミス級 DD搭載強襲揚陸艦 5番艦 アルキオネ 艦内



 部隊の異動を命じられたアストはその後、副長のサラ・ブラウン少佐と共に艦内の食堂へ向かっていた。


 まだ名前も決まってない部隊って、俺が言えたことでは無いが……やる気あるのかな?独立部隊とか言ってたけど、指揮官は誰なんだ? 


 23年間、同じ艦隊で過ごしてきたアストの頭は凝り固まっていた。正直、受け入れ難い。


 まぁ、なるようになるか!まずは腹ごしらえ……おぉう、皆さんお揃いで。


 

「あ、アスト艦長!報告、終わったんですね!……どうかしました?」少し癖のあるブロンドの髪をハーフアップにしている女子、エクスィーのパイロット、アーシア・アリーチェ。

 

「――あぁ、まぁなんだ? 今回も目立ち過ぎたなぁ お前ら」


「えへへー小型なんて私たちだけで余裕ですよ!」腰に手を当て、えっへんと胸を張る。彼女はいつも明るく元気いっぱいだ。


「ねっ!リリアさん!」と隣にいる女性、ヴィナミスのパイロット、リリア・ソコロフに声をかける。癖のない黒髪のショートヘアーは綺麗に切り揃えられ、育ちの良さをうかがわせる。


「――そうね」と冷たく返すが2人の仲は良く、彼女はいつもこんな感じで、非常にクールだ。


「で、何かあったんですよね?」


 リリアの視線が刺さる。流石に、はぐらかせないか……


「あー、そのだな……」


 先程の結果報告後のやり取りを説明する。



「第3艦隊から異動?」

「そんなことで神妙な顔してたんですか?」


「いや、ほら、俺ずっと第3艦隊だったしさ……独立部隊ってよくわかんないし」


「大丈夫ですよー!だってこのメンバーは変わらないですよね?私この部隊が好きだから嬉しいなー」


 今時の娘たちはなんだかメンタルが強いなぁ。特にDDのパイロットとなれば尚更。おじさん疲れちゃうよ。


 和気藹々わきあいあいとした会話の中、サラ少佐の端末から着信音が鳴る。


 一言こちらへ「失礼いたします」と言い、端末を耳にあてがい、少し離れた。




「次もガルシア司令官みたいな優しい人が良いですね!」


 ガルシア司令官が優しい?まぁ、他の司令官はもっと厳しくお堅い人が多いのかもな。

 てか、可愛い女の子達にはそういう印象持たれてるってことは、狙ってたな?あのおっさん。


 自販機の前に立ち、迷いはするが結局いつものテリヤキバーガーのボタンを押し込む。熱々に調理されたバーガーとセットで固形ビタミンが一緒に出てくる。

 取り出し、立ったままかぶりつく、バンズもパティもパサパサのテリヤキ味だ。照り焼きとは違うらしいが俺の日本人のDNAはこれでも良いと言っている。

 

「天音艦長、総司令部からです。そちらの端末へ繋ぎます」サラ少佐は飲み込める様に水も一緒に渡す。


 ムグッ!「ゔ、うん――助かる。――天音アスト中佐、変わりました」


『お久しぶり〜ヒトトセ イチカよ!今後、独立部隊の司令官になったわ!よろしく!』


 日本人か、随分とフランク……てかお久しぶりって……誰?


「……よろしくお願いいたします」


『その言い方、私のこと覚えてないわね?――まぁいいわ?早速、明日の12:00にケプラーを出航してもらいます!』


「了解いたしました」


『詳細は出航前には送ります。立ち上がったばかりの部隊だから忙しくて、あまり話せないのが残念ね。グリーゼで"直接"会えるのを楽しみにしてるわ!』


「ありがとうござ――」切れた。


 名前なんだっけヒト――だめだ出航時間しか覚えられんかった。

 

 ため息を吐き食堂に居るクルーへ出航時間を伝え、再びパサパサのバーガーに喰らいつくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る