新たな部隊と舞台 Ⅰ´
北暦290年
ケプラー日時 11月11日 22:46
アルテミス級 DD搭載強襲揚陸艦 5番艦 アルキオネ 艦内
部隊の異動を命じられたアストはその後、副長のサラ・ブラウン少佐と共に艦内の食堂へ向かっていた。
まだ名前も決まってない部隊って、俺が言えたことでは無いが……やる気あるのかな?独立部隊とか言ってたけど、指揮官は誰なんだ?
25年間、同じ艦隊で過ごしてきたアストの頭は凝り固まっていた。正直、受け入れ難い。
まぁ、なるようになるか!まずは腹ごしらえ……おぉう、皆さんお揃いで。
「あ、アスト艦長!報告、終わったんですね!……どうかしました?」少し癖のあるブロンドの髪をハーフアップにしている女子、エクスィーのパイロット、アーシア・アリーチェ。
「――あぁ、まぁなんだ? 今回も目立ち過ぎたなぁ お前ら」
「えへへー小型なんて私たちだけで余裕ですよ!」腰に手を当て、えっへんと胸を張る。彼女はいつも明るく元気いっぱいだ。
「ねっ!リリアさん!」と隣にいる女性、ヴィナミスのパイロット、リリア・ソコロフに声をかける。癖のない黒髪のショートヘアーは綺麗に切り揃えられ、育ちの良さをうかがわせる。
「――そうね」と冷たく返すが2人の仲は良く、彼女はいつもこんな感じで、非常にクールだ。
「で、何かあったんですよね?」
リリアの視線が刺さる。流石に、はぐらかせないか……
「あー、そのだな……」
先程の結果報告後のやり取りを説明する。
「第3艦隊から異動?」
「そんなことで神妙な顔してたんですか?」
「いや、ほら、俺ずっと第3艦隊だったしさ……独立部隊ってよくわかんないし」
「大丈夫ですよー!だってこのメンバーは変わらないですよね?私この部隊が好きだから嬉しいなー」
今時の娘たちはなんだかメンタルが強いなぁ。特にDDのパイロットとなれば尚更。おじさん疲れちゃうよ。
一言こちらへ「失礼いたします」と言い、端末を耳にあてがい、少し離れた。
「次もガルシア司令官みたいな優しい人が良いですね!」
ガルシア司令官が優しい?まぁ、他の司令官はもっと厳しくお堅い人が多いのかもな。
てか、可愛い女の子達にはそういう印象持たれてるってことは、狙ってたな?あのおっさん。
自販機の前に立ち、迷いはするが結局いつものテリヤキバーガーのボタンを押し込む。熱々に調理されたバーガーとセットで固形ビタミンが一緒に出てくる。
取り出し、立ったままかぶりつく、バンズもパティもパサパサのテリヤキ味だ。照り焼きとは違うらしいが俺の日本人のDNAはこれでも良いと言っている。
「天音艦長、総司令部からです。そちらの端末へ繋ぎます」サラ少佐は飲み込める様に水も一緒に渡す。
ムグッ!「ゔ、うん――助かる。――天音アスト中佐、変わりました」
『お久しぶり〜ヒトトセ イチカよ!今後、独立部隊の司令官になったわ!よろしく!』
日本人か、随分とフランク……てかお久しぶりって……誰?
「……よろしくお願いいたします」
『その言い方、私のこと覚えてないわね?――まぁいいわ?早速、明日の12:00にケプラーを出航してもらいます!』
「了解いたしました」
『詳細は出航前には送ります。立ち上がったばかりの部隊だから忙しくて、あまり話せないのが残念ね。グリーゼで"直接"会えるのを楽しみにしてるわ!』
「ありがとうござ――」切れた。
名前なんだっけ……ヒト――だめだ出航時間しか覚えられんかった。
ため息を吐き食堂に居るクルーへ出航時間を伝え、再びパサパサのバーガーに喰らいつくのだった。
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