第3話
教室を出ると、高いポニーテールをしている少女が教室の扉を覗かせていて彼女だとわかった。
「ずいぶんと早いね……」
「当然です!先輩を待たせるわけにはいきませんので!」
得意げに話す。
「まぁ、遅ければ私も置いてくところだったしね」
「酷いですよ!」
「冗談だよ。じゃあ、行こうか」
不思議な気分だ。今日突然話しかけた人と二人で出かけるなんて。そもそも趣味も何もわからない子と二人だけでいられるのか?
小田急線に揺られ、下北沢を目指す。
「電車、まあまあ混んでますね……」
「うん」
「明日、雨らしいですよ」
「そうなんだ」
「………」
彼女の話すことに興味が持てず、なんとなく反応する。でも、彼女はめげることなく私に話しかけ続ける。
駅に到着し、永遠に感じるほど遠いエスカレーターを登っていく。
もう帰りたい……
でも、私が誘ったようなものだ。しっかり会話しないとな。
「私、いつもここに来てライブを見るんだ」
「そうなんですね。先輩もバンドやってるんですか?」
「私は楽器弾けないし、歌も上手くないからやってないよ。ライブハウスの空気感が好きなんだ」
「へぇ…なんかかっこいい!」
「すみれちゃんもきっと楽しめるんじゃないな。入ってみようか」
「はい!」
今日はずいぶんと混んでいる。何とかカウンターに辿り着きコーラと「ジンジャーエールに交換してもらう。
いつも一人で来てるから不思議な気分だ。
彼女は初めて見る様子だったのか、終始あたりを見回したり落ち着きのない様子だった。
「美咲先輩はいつもここ、通ってるんですか?」
「うん。暇な時はね。バンドの曲聞いてると気持ちがすっきりするみたいな?」
「確かに!ぶぅわーって音を浴びていると強くなれる気がしてきます!」
「ふふっ。その独特な感想面白いわね!」
「えぇっ!私は共感したつもりだったのに!美咲先輩の感想とどこが違うんですか!」
「いやいや、強くなれるって何よそれ?オーラを纏うってこと?どうかしてるよ!」
「そんなぁ〜…美咲先輩と分かり合えたと思ったのに〜」
「突然話したこともない相手に告白するような人の気持ちなんて微塵もわかるわけないじゃない!」
「うぅ…」
ライブハウスを出る頃には、すみれといることが楽しくなっていた。
花咲くこころ えーあいキッズ @ai_kids_3129
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