最近の流行りって悪役転生じゃないんですか!?

第1話

昔から、肝心な時に足がすくんで動けなくなる人間だった。

もし俺がここで手を出せばこうなるかもしれない、ああなるかもしれない、そんな考えが頭の中をぐるぐる回って、しまいには痛いぐらいに目も回り出す。

だからだろうか、あの日のことはよく覚えている。

後にも先にも、後先考えず足が前に出たのは

あの日だけだったし、何より俺の人生……

いや、前世と言った方がいいか

激変した日だったからな。

まあ端的に言うと死んだんだ。

俺は30幾つのおっさんで、よくあるブラック企業でこき使われてるという訳でもなく、

いややっぱりちょっとブラックだったな。

で、ちょっとオタクだった。

雨の日だった、会社の帰りにある交差点で信号を待ってた。

俺、右隣に母娘、後ろにフードを被った男がいた。

いや思ったね、なんかやばくねって、

だって後ろのやつ、俺を裏切りやがってとか

ブツブツ言いながら隣の親子睨んでるんだぜ？

嫌な予感は的中した。

信号無視した車が走ってきたんだ、それみた男が女の子を抱えてっこんで行ったんだ。

気づけば俺は走り出して、男を突き飛ばして抱えてた女の子を思いっきり、母親の方に押し出した。

そうだな、そこで車が突っ込んできて

意識が飛んだ。

そして目を覚ますと、''白"が目に入ってきた。