第15話

 圭子は売れる土地はさっさと売り、まとまった金を手にすると益々強気になり本田家の墓の普請に取り掛かった、僕はさすがに怒り狂った「姉さん墓をどうするんだ」と問いただすと「山上家の名前に変えるのよ、どうせ私が家を継ぐんだから当然でしょう」といきり立った。圭子の行為は益々エスカレートして手がつけられなくなってきた。僕はもはや近くにいることが耐えられなくなってきたので、結局家を出ることにした。おなじ町にいることさえ居心地の悪さを感じるので車で30分くらいの町へ引越すことにした。圭子はしたり顔の笑みを浮かべて「げんきでね」などと心にもないことを言って送り出した、僕はどうしょうもない悔しさで暴力的になりそうになったが、ぐっと抑えて、これで終わりだ、と自分に言い聞かせた。

 僕はワンルームマンションを借り一人静かに暮らしだした。しかし時折、母のところにいったり、実家の近くの商店などに立ち寄ったりすることもあるので、自然と圭子の評判は耳にはいってくる、町では長男を追い出した女ということであまり評判は良くない。しかも人を見下す姿勢や、一家で働かず家をごみ屋敷にしていることが評判をさらに悪くしていた。

 ある日、母が体調を崩した、母は圭子の傍若無人さと僕への迷惑を常日頃悩んでいた、ある時点から圭子は老人ホームには全く行かずお金の管理も好き放題にやっていた、母はお金が不足している場合は仕方なく僕に連絡をしてきた。母は僕がいくたびに申し訳ないを繰り返していた、「しようがないよ、姉さんも運が悪いところもあるんだから」僕は母の言葉をなだめたが、やはり母には大きなストレスらしく食欲も落ち体力も日増しに落ちていった、ベッドに横になっている日も増えひどくやせ細ってしまった。

 母の体調もなかなか好転せず目に見えて弱っていった。

 ある朝、職員さんが母に声をかけると返事がなく、寝ているような母の姿を発見した、何の前触れもなく眠るように息を引き取った。



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