第12話

 その後、誠治の様態は変わらずで、圭子の気力も段々と失せてきた。

 圭子は子供と3人で生きていくという覚悟に傾いていった。とりあえず経済的にも住まいにも困らないので病院へ行かないときは相変わらずマイペースでのらりくらりとしていた。子供たちにいたっては、全く病院へは行かず、父親の存在など消えているようだった

 3人の暮らしは何不自由なく優雅にさえみえていた。

 その後、入院は年単位で続いていった。あまりにも長い入院生活なので誠治のことはマンネリのなかに消えてしまった、むしろ、圭子にとっては子供のことが最大の関心事で受験や学費のことが気になってきた、結局、圭子の金策と言えば実家しかない、ある日、母親に父親の退職金のことを聞いた、圭子が子供のことやこれからかかる学費のことをこぼすと、母親はしかたなく夫の退職金を圭子に全部預けてしまった。

 父親の退職金は2000万くらいあった。圭子はその金をすべて2人のこどものために使った。おかげで子供たちはアルバイトもせず楽々と大学までいった。

 大学まで出た2人はやはり就職もせずのらりくらりの日々を送っていった。 時折、長男の太一は男として多少の社会的責任を感じ、お金のことを何度か圭子にたずねると「いいのよ心配しなくて」とほほ笑み「働きたくなったら働きなさい」などと呑気なことをいっていた。



 

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