第10話

 それから同じような状態が1週間続いた。 

 今度は天井のライトに反応したらしく薄目でライトをじーと見つめながら少し声を出した、圭子はすかさず誠治の声に反応して会話をしようとしたがうめき声にしかならず言葉を中断した。

 駆け付けた医師はペンライトで誠治の目を照らしながら「やはり記憶はとんでますね、会話にならないでしょう」

 圭子は覚悟はしていたがやはり悲しくなり涙ぐみながら「もう戻らないのですか」とたずねた、医師は頷きながら多分と言いながら部屋を出て行った。

 圭子は毎日なんども話しかけたがやはり反応はない。医師も「おそらくこの状態はしばらく続くでしょう」といい、何も仕様がないようだった。

 入院してから1か月も経った日、医師から「状況は変わらないでしょうから病院としてはそろそろ転院をお願いしたいと言っています。」

 圭子はただ頷くだけで、どうしょうもないので、医師に相談をした。

 医師は老人ホームを兼ね備えた病院を紹介してくれた。


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