第4話

 老人ホームはT駅の近くにあったので子供を連れて難なく行けた。

3年ぶりだ、母は73歳になり頭は真っ白になっていた。

母は娘が突然訪ねてきたことをとても喜び、2人の孫に会えたことも手放しで喜んだ。「お母さん今度家に引っ越してくるよ、いつでも来られから安心して」

 圭子は母親の嬉しそうな顔をみて次の言葉を切り出そうとしていた。

「おかあさん今度私たちが住むのに生活費がかかるでしょう、お父さんの遺族年金で何とかならないかしら」母親は一瞬緊張したような真顔になり、「今、老人ホームのお金と家の維持費で結構かかるのよ」圭子も真顔になり切り返し「それなら私にやりくりを任せてくれれば大丈夫よ、私が、頑張るから、足りない部分はなんとかするから」とか適当な言葉を並べて母親を安心させた、結局、年金通帳を預かってしまった。

 確か遺族年金と母親の年金を合わせると月30万円は入るはずだ。

圭子はにんまりとして今日の用事は済んだとばかり子供の手を引いた「じゃあ、お母さんまたくるね」

 圭子は駅までの距離を浮足立って、子供に「今晩はおいしいもの食べようね」と微笑んだ。

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