第42話 年越し


「よう、アル達も久しぶりだな」

 アルは髪を伸ばしているみたいだな。

「ひ、久しぶり!」

「何緊張してんのよ!おかえりスズト!」

「そうよ!一番首を長くしてたじゃない!」

「こ、こら」

「あははは、ただいま」

「ミャーもいるにゃ!」

「ようミャー!元気してたか?」

「元気ミャー」

 とみんなとも再会できて嬉しいな。

 で飯の準備ができたのでまた桐生院の横に座り飯を食いながらこの度のことをしゃべる。


「なかなか壮大な旅だな、それに帝国も絡んできたのか」

「絡んだと言うか絡まれたと言うか」

「まぁ、何にせよ無事戻って来て良かったな」

「そうですね」

 と晩飯もゆっくり食べ、ミレイさんに連れられて来たのは隣のビルが二つ建っていて、奥の方のビルが社宅になっているらしい。

「ここの最上階に時雨さんの家があります」

「最上階?!」

「まぁ、三部屋あって一つはレイナさんの、もう一つはミオさんの自宅になります」

「はぁ、お隣さんになるのか」

「なに?いやなの?」

「別にそんなこと言ってないだろ?アンディーは?」

「座間で頑張ってるよ?」

「そうか」

 アンディーも頑張ってるみたいで良かった。

 最上階に着いて俺の家になる部屋に入る。

「何で着いて来てるの?」

「べつに?」

「いいじゃない?」

「まぁいいけどさ」

 と中に入ると家具家電は揃っていてあとは人が住むだけになっていた。

「ほえぇー」

 流石にここに1人はすごいな。

「3LDKになりますのでご結婚後もここで暮らせますよ?」

「ブッ!!」

「あはは、なにそれ」

「もういい歳なんだから決めてよね!」

「揶揄うなよ、ミレイさんまで」

「ウフフ。すいません」

 そしてみんな帰ったあと、ようやく1人になれたな。

 シャワーを浴びて、ビールを開けながらテレビをつける。

 相変わらず日本のことしかやっていないが、王国と友好国になったのはいいことだろうな。

 ダンジョンも終わったし、あとはのんびりするか。年ももうじき変わる。



「「「明けましておめでとうございます」」」

「はい、今年もよろしく」

 桐生院家で年越しパーティーだ。

 

 舟盛りに鍋やオードブルなどたくさんの品数がテーブルに所狭しと乗っている。

 みんな元気にパクついているが、これ総額いくらよ?

 今日は朝から来ているので、昼間に蕎麦は食べたし、夕食はこれだ。もうお腹いっぱいだ。

 元旦になってもみんな元気に酒を飲みながら喋っている。

「こんなに美女が揃う正月は初めてだな」

「もう、お父様酔ってらっしゃいますね?」

「まぁいいじゃないか、なぁ、母さん」

「まぁ、こんな可愛い子達が集まってるんですものね」

 と初めてカオルの母さんを見たが綺麗な人だ。ハーフらしい。

 子供が生まれたからと実家に帰っていたがようやく帰って来れたようだ。

 息子さんが産まれたのでそりゃ桐生院さんも楽しみで仕方なかっただろうな。

 美容グッズ(肌年齢が10歳若返る&アンチエイジングオイル)とマジックバッグを送ったら喜んでくれた。

 まぁ、どこのママさんも女でありたいだろうし、荷物は多くなるからな。


「政宗ぇー!お姉ちゃんでちゅよー」

 とカオルもニヤケ顔が止まらないらしい。

「いいなぁ、私もあんな家族が欲しいなぁ」

 と酔っているのはアルだ。

「酔っ払いめ!俺は酔えないんだ」

「むー、私を娶ると言ってくれ!」

「いやだ!俺はまだ独身でいたい!」

「くぅ!この根性無し!」

 とプリプリ怒っているがこの席を取られないために残っている。

「そろそろ決めたらどうだ?」

「桐生院さん、俺はまだ1人でいいんです」

「やることも終わったのだろう?」

「まぁそうですけどね、少しはゆっくりしないと」

「そう言うもんかね?私の若い頃は「パパ?」…ゴホン、そうだね、1人に決めるまではね!」

 相当遊んでたみたいだな。

「それにしてもクランですか」

「そうだよ、クラン長は君しかいないだろ!」

 クラン長か?ギルド長みたいなものだろ?

「誰かの上に立つのはあまり好きじゃないんですよ」

「立てばわかるさ、楽ではないがやりがいはあるぞ?」

「んー、お断りします」

 こう言うのは断っておいて正解だと思う。

「空けておくからまだ考えておいてくれ」

「わかりました」

 はぁ、年明け早々になぜこんなに疲れるんだ?

「にゃー!」

「よ、ミャー!」

「私の裸見たくせに責任取るにゃ」

「ば、ばか!あれは事故だろ!」

「「「「「「へぇー」」」」」」

 一気に氷点下まで下がる温度。

「オギャー」

「おーよちよち、裸見たスズトはほっといてねんねしましょうねー」

「なっ!俺は悪くないっつーのに!」

「まぁ、裸くらい「パパ」ダメだぞ?」

 桐生院家は女が強いと…そんなことよりなぜこんなに見られてるのだ!

「私のも見せるから結婚してよ」

「何言ってんだよククル!」

「わ、私だって」

「そこ!張り合うなよ!リリ」

「まぁ、胸は私が一番ですからね」

「このお化けおっぱい!」

「なんですか?まな板風情が!」

 と罵り合うネアとライア。


 カオスな正月だ。

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