第37話 帝国


 道を進んでいくと門に着く。

「通行証を!」

「これでいいか?」

 とギルド証を見せると、

「通ってよし!」

 中に入ってみると王国よりは発展しているみたいだな。でも石畳だし、馬車が走っている。

 中世っぽいのは変わらないんだな。


「さてと、まずはギルドからだな」

 伸びをしてからギルドに向かう、受付でギルド証を見せて、

「俺はスズトって言うが、外から来た人間だ。ギルド長に会えるか?」

「え、え?外の人ですか?」

「そうだな」

「しょ、少々お待ちを!」

 と言って2階に上がって行く。見たことあるぞ?

 手招きされたので登って行く。

“コンコン”

「入れ」

 ここも見たことあるな。

「お連れしました」

「はぁ」

「やぁ。まぁかけたまえ」

 と若い男が目の前で椅子に座ってにこやかにしている。

「ギルド長なんだろ?」

「そうだね、僕がギルド長のシアンだ」

「ふぅ、外の人間のスズトだ」

「で?どうやって入ってきたの?」

「ギルド証だ、バドの街で作った」

 この優男は他のギルド長と違って痩せており飄々としているが、驚いた顔でこっちを見ている。

「き、君は今王国と帝国が争っているのを知っているのかい?」

 と慌てているが、そんなことは問題じゃない。


「知ってるが冒険者は問題ないだろ?」

「まぁそうだな、で外の者がどうして帝国に?」

「ジョセフと言う冒険者と知り合いができてな」

「あぁ、ジョセフと知り合ったのか、あいつは気さくでいい奴だろう?」

「そうだな、そのジョセフがやばいと思うくらいこの国の人間は勘違いしているからな」

「ん?どう言うことだ?」

「ここからダンジョンまでどのくらいだ?」

「そうだな、三日あればつくか」

「それが間違いだ」

「へ?」

「実際は歩いていたら一ヶ月はかかるか?」

「な!そんなばかな!森を抜けたらすぐだぞ?」

「はぁ、なら先ずは飛行機から見てみるか」

「ひ、飛行機?!」

 転移で飛行場に行く。

「な、何だここは?何故こんなに綺麗なんだ?え?」

 ただの飛行場だが羽田だ。

「え?あ、あれが飛んでいく」

 飛行機が飛び立って行った。

「そうだ、あれが飛行機だ、人を乗せて飛ぶぞ?」

「あ、また、え、なんでだ?」

「どんどん飛行機は人を運ぶからだよ、んじゃ戻る前にダンジョン前に行くか」

「え!」

 転移してダンジョン前に行くと、

「な?なんだここは、え?ダンジョン?何故こんなところに?」

「あ、ギルド長!帝都はどこに消えたんだ?」

「俺たちは帝都に帰りたい!」

「は?帰ればいいじゃないか?」

 と詰め寄られるギルド長。

「何処にあるんだよ!」

「え、えーと、ど、どこなんだ?」

「ん?あっちの方角だが、どっちにしろ歩いて行くのは無理だな」

 森すら見えないから途方もない距離だな。

「う、うそだろ?」

「さてジョセフを迎えに行くか」

 転移で東京のホテルに戻ると、

「あ!やっと来た!ってギルド長!」

「お前ら!こ、ここは何処だ?」

「ホテルだ、そっち風に言うと宿屋だな」

 教えてやると目を丸くして驚く。

「なっ!」

「飯はうまいし、ベッドはフカフカだし天国だったぜ」

 とジョセフは嬉しそうだな。部屋着に着替えてるしな。

「どうだジョセフ?戦争は?」

「は?無理だろ?こんな世界で王国と戦争?馬鹿げてるね」

「そ、そうなのか!?」

「これ見なよ」

 とテレビをつけるジョセフ。慣れたもんだな。

 チャンネルを変えて行くと王国が映っているな。

「王国は帝国なんか無視して外交を始めてるみたいだな」

「それは本当か?」

「見てみろよ?あれは間違いなく王国だろ?」

 と流れる映像には国王と市長が握手している。

「こ、ここは何処なんだ?」

 地図を広げてやる、そして東京を指差すと、

「う、嘘だろぅ?こんな小さな点じゃないか?」

「ギルド長?俺はできれば王国側に行きたいね」

「あたいも」

「俺も」

「何故だ?帝国民だろ?」

「外交をうまくやってくれるなら帰りたいが、今の帝国じゃ無理だろ?」

「そ、それは…」

「世界を勉強しないとおいてかれるのは帝国だな」

 俺が言うと3人が頷く。

「ど、どうしたらいいんだ?!このままでは」

「まずは帝王にそれだけの器量があるかだがな」

「それは…」

「こんな建物は帝国にはないし、あんな動く物も無いしな」

 と外をみて車を見ている。

「お、お前らこんな高いとこにいるのか?」

 シアンは窓から離れる。

「おう!快適だぞ!」

「もうここにずっと住みたいくらい!」

「はぁ、んじゃチェックアウトして帝国に帰るぞ」

「はぁ、そうだな」

「いやだぁー」

「俺はここに残る!」

「着替えろ!」

 と蹴られるリース。

 

 ホテルをチェックアウトして外に出る。

「ふおぉ?!」

「ここが日本という小さな島国の都市だ」

「こ、ここがか?」

「そうだ、じゃあ手を握れ」

 ギルド長室に帰ってくるとみんな元気がなくなった。


「で?どうするんだ?」

 俺が聞く前にジョセフが聞く。

「どうするも何もこんなの誰も信じないじゃないか!」

「誰かが動かなければこの国は終わるぞ?」

「…仕方ないか、スズトよ。少し手を貸してもらえないか?」

「はぁ?俺は関係ないぞ?」

「お願いします!」

「スズト、俺からもお願いする」

 と結局4人に頭を下げられ仕方なく王城について行く。

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