第32話 王国2


「その代わり飛行機には爆弾や薬物なんかは載せられないぞ?」

「そ、そうなのか!」

「それ用の戦闘機があればいいが、王国と帝国は離れすぎだ、貸したりはしないだろうな」

「ま、待ってくれ、そんなに離れているのか?」

「おう、ここから鬼の森まででもかなり距離があるから飛行機を使うな」

「そんな?鬼の森なんて馬車で10日くらいで」

「着かないよ?行けてこの辺じゃないかな?」

 とある程度のところを指差す。

 ヤックは困った顔をしている。

「それは本当のことなのだろうな」

「んー、スマホで確認するか」

 スマホを出してある程度のところで経路案内させると歩きで20日と出た。

「そ、そんな…では、戦争は?」

「空中分解だろうね?それよりも目先の外交をした方がいいと思うよ?」

「そ、そうだな、これはいかんな!また王城へ行かねば!」

「まっ!俺も!?」

「お前がいなければ話にならない!」

 と俺と地図を握りしめて二回目の登城だ。


「はぁ、何事だ?我も忙しいのだぞ?」

「はい!それは重々承知していますが、スズトによりますと帝国との戦争は無くなると」

「なに!?なぜだ!」

「この地図をご覧ください」

 と広げる世界地図。

「我々の王国がここで帝国はここです」

「分かっておる、帝国は飛行船を所持しておるじゃないか!」

「スズト!頼む」

 と暑苦しい顔で言われる。

「はぁ、そもそもパンゲアと地球の大きさが違う様ですね」

「それは真か?」

「はい、鬼の森が私の住んでた地域に当たりますがここからだと馬車では難しいでしょうね」

「は?10日ほどで着くはずだが?」

「はい、そう言われましたが、私は飛行機に乗ってここに来ました」

「ひ、飛行機とはなんだ?」

 そこからかよ、はぁ、疲れるな。

 俺は懇々と諭すように話を進める。


「…はぁ、世界はその様なことになっているのか」

「ですから戦争は起きないと思います。それなら外交に目を向けた方がいいと思いますが?」

「そ、そうだな、ちょっと待て、誰か甘いものを」

「なら私が」

 と収納からシュークリームを出して渡す。

「こ、これは?」

「シュークリームですね、どこでも手に入りますが」

「お待ちを!王よ!毒味が必要かと」

「ハァ。分かった、はようせい!」

「は!では、私が」

 とカイゼル髭の男がスプーンでシュークリームを割って食べる。

「う…」

「な、なんじゃ!」

「これは…美味い」

「ッ!ワシに貸せ!…あ、あまぁい!美味い!美味いぞ」

 と王様はご満悦だ。


「これはどこでも手に入ると申しておったな!」

「多分ですが…うーん、シュークリームはわかりませんがクッキーなどなら」

「スズトはもう持っておらぬのか?」

「ありますよ、シュークリームは…これだけですね」

 と9個のシュークリームを出すと、

「よし買おうではないか!」

「いいですよ、これは献上しますよ」

「いいのか!ありがとう!」

 と一つを開けて食べている。

「美味い!よし!これを作り出すのだ!」

「はっ!」

 と残りを持ってどこかに行ってしまうが作れる人を連れて来た方がいい気がするな。


「そうか、友好国になると言っていた国に日本があったな!早速日本と外交をする!外交官よ!日本に連絡を!」

「はい!」

「電話はないのですか?」

「電話とはなんだ?」

「遠いところの人と話すことのできる機械ですね、あぁ、電気がないんでしたね」

 全て魔法だからなぁ。

「ぬぅ、電気があればそれが使えるのか?」

「いえ、まずはパンゲアと地球の違いから覚えた方がいいと思いますが」

 電気云々ではないと思う。

「そ、そこからか?」

「そうですね、いまバドの街があるのがここになります」

「な!ずいぶん遠くに行っておるな!」

「今は外貨を獲得するために観光地の様になってますよ?」

「な!真であるか?」

「はい、行きましたからね」

「で、では死の森は?」

「ここら辺らしいですよ」

「また遠くなったな!!」

 と驚きを隠せないでいる人たちだが、

「ですからここはサハ共和国というところなのでそこと外交を一番に考えた方がいいかと」

「な、なるほど!よし!それで行こう!」

「ど、どこに外交にいけば?」

「そうですね、ヤクーツクの市長に会いに行けばと」

「分かった!スズト!お願いするぞ!」

「は?俺がですか?」

「お主が頼みじゃ!報酬は出す!よろしく頼む!」

 はぁ、俺は何をしてるんだろうか。

「そうですね、とりあえずアポを取ってみます」

「なんじゃ?アポ?」

 無視して検索して電話をかけてみる。


 意外とすんなり応じてくれた市長に感謝して、外交官と一緒にヤクーツクの市内に入ると驚く外交官。

「な、馬がいないのに?」

「あれは車ですね」

「あれは魔法が?」

「あれは電気です」

 といちいち説明する。


「アポを取った時雨と言いますが」

「あ、はい!市長がお待ちです」

 と通された場所は市長室だ。

「初めまして、私がヤクーツクの市長のアムル・コラエフだ」

「初めまして、今回、間を取り持つことになった日本人の時雨涼都です。そしてこちらが王国の外交官の」

「ガイと言います!よろしくお願いします」

「そうですか、日本人とはまた珍しいですね。山形県の村山市とは友好都市なんですがご存じですか?」

「はい!さっき知りましたが」

 検索万歳!

「あはは、正直ですね。それではサハ共和国においての王国の対応はどういったものに?」

「ゆ、友好国として私たちの国を認めていただければと」

「それは市長の私だけでは決めかねますね、ここはロシア連邦になりますから」

 まぁ、そうなるよな。

「私から一つよろしいでしょうか?」

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