第9話 騙された


 村を出て群馬の温泉街にやってくる。

 今日から3日ほどこの温泉街でのんびりと過ごす。

 総勢11名の大所帯だが、今泊まりに来る人がいない、と言うかキャンセルが相次いでいるらしいので空いていて良かった。

 アル達は5人部屋、カオル達がミレイさんも含めて4人部屋で俺は落内さんと2人部屋だ。

 ん?アルはいいのか?ハーレムパーティーだからいいのか。

「はぁ、極楽ですねぇ」

「そうですねぇ」

 アルを誘ったら怒られてしまった、何故?

 しょうがないから落内さんと温泉に入っている。

 まぁこれはこれでいい気持ちだからいいな。

 風呂上がりに牛乳を飲んでいると浴衣姿のアルが目の前を通った。浴衣姿?胸がある?

「ブハッ!!」

「ギャー!きったねえなぁ」

「ず、ずまん、え、えぇー!」

 アルは女だった。


 もう一度風呂に入る俺と、牛乳を吐きかけられた落内さん。黙って湯船に浸かり自分の頭が硬いことに反省していた。


 そうだよな、あんな女パーティーで男の格好をしていても気付くべきだった。

 線の細いイケメンだと勘違いしていた。


「ごめんなさい」

「いいですよ、私の名前はアルメラですから今度から…ち、ちゃんと意識してくださいね」

「分かったよ、アル」

 はぁ、2回も風呂に入ったのに疲れが癒えないな。


 飯はやはり美味かった。

 赤城鶏の地鶏釜飯や赤城牛のすき焼きなんかは絶品だったな。

 

 だが、3日も続くと飽きてくるのが人間だ。

 ようやく俺の剣が出来上がるので取りに行く。

 バスで向かい、剣を取りに行くと大声で怒鳴っているので中に入る。

「どうしたんですか?」

「おう!スズト!これがお前の剣だ!」

 と投げ渡された剣を受け取ると、

「ふざけるな!俺に渡せ!」

 と襲いかかってくるのでサンダーショックで痺れさせる。

「なんですかこいつ?」

「しらん!どっかから噂を聞きつけてその剣を売れと言ってきて困っておったんだ!」

「く、くそ、お、おれにこそ相応しい」

「はぁ、お前はゴブリンキングに勝ってから作ってもらえよ?」

 と外に放り出す。

 そしてお代を40万渡して、帰ろうとすると、

「け、剣で勝負だ」

「はぁ、ならゴブリンの剣でやってやるよ」

「は、ば、バカにしやがって!」

 突っ込んできた相手をクルリと投げ飛ばし喉に剣を突きつけると、

「ま、参りました」

「ふん!弱いのに武器に頼ろうとするな!」

 収納にゴブリンの剣を収納すると、新しい剣、レックスソードを腰の剣帯に取り付ける。

 何度か振ってみるとしっくりとくるので頼んでよかったな!


 そういえば俺たちと一緒に行動しているが、

「ここまで来てなんだが、3人とも学校は大丈夫なのか?」

「え?いまさら?私達女子大であとは卒業論文くらいだよ?」

 とカオルが驚いている。

「は?女子高生じゃなかったのか?」

「失礼な!超失礼!」

 とレイナが脛を蹴ってくる。

「痛、痛、分かったよごめんごめん」

 いやぁ、アルと言い女子3人と言い、わからないことだらけだな。


 コンビニに寄って新聞とコーヒーを買っておく。みんなはスイーツなどに目がいってるようなので女の子だなぁと思ってしまう。


 とまた寄り道したのはカオルが俺のスーツを普通の服に変えたいと言って聞かないので、スーツ以外になる。

 まぁ、シャツにスリムの黒いパンツなど数点を購入させられた。

 似合うと言われて買わないわけにはいかないからな。

 それにアルやカオル達も着替えが欲しかったようだ。

 半日が潰れるとは思わなかったがな。


 これからまた家の方に帰る。

 鬼の森の深部だ。

 村はもう、一つの観光名所になっているようだし、問題ないだろう。


 自衛隊はそこかしこで暴れているゴブリンを倒しているようだが拳銃なんかは効かないから苦戦しているようだ。

「ちょっと止めてくれ」

 知ってる顔がいたのでバスを止めてもらう。

「亜麻仁さん」

「君は時雨君だったね」

「はい、モンスターには拳銃なんかは効かないようですね」

「そうだな、どうにか倒してはいるのだが」

「これが効きますよ」

 とゴブリンソードを出してやる。

「これは?何処から出した?」

「それは秘密ですが、ステータスは見れますか?」

「あぁ、倒したら見れるようになったな」

「そこのSPを押してみてください」

「こ、これは?」

「SPを消費して覚えられるみたいです」

「そうか、君が強いのはこれのおかげか?」

 亜麻仁さんは目力が強い女の人だな。

「まぁ、そうですね」

「いいのか?教えてもらったが」

「自衛隊の役に立てればいいですよ」

「ありがとう!早速使ってみる!この剣は?」

「あげますんで頑張ってください」

「了解した、ありがとうな!」

 と言って亜麻仁さんは人を呼ぶ。

 俺はそのまま帰ることにし、バスに乗り込む。

「教えて良かったの?」

「こう言うのは自衛隊なんかには必要な情報だろ?」

「レイナもパパに教えた」

 おずおずと喋るレイナ。

「それでいいと思うぞ?」

 と言われて良かったと胸を撫で下ろしている、

 自衛隊が強くなればこちらとしても鬼の森の治安が悪化することはないだろう。

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