第7話 SP


 桐生院家に着いたのは9時頃だ。

 車を収納して着いたぞとLUINで入れると直ぐに返事が返ってくる。

 少し待ってると門が開き中に通される。

「おはようございます、時雨さま」

「おはようございます、スズトでいいですよ」

 とミレイさんに言って中に進んでいく。


「おはよう時雨君、よく眠れたかな?」

「おはようございます、昨日は無茶をしましたからね」

「そうか、これが報酬だ。それでは契約の方を」

 報酬をもらうと三百万はあるな。

「あ、その件ですが保留にしてもらえますか?」

「…何故だい?」

「あはは、私はブラックで働いてましたのでちょっと休みが欲しいなと思いまして」

「そうだったな。それじゃあこの話はまた今度で」

「はい、ありがとうございます」

 まぁ、今度は無いと思っておこう。俺は報酬を胸ポケットにしまうフリをして収納に入れる。


「スズト、おはようございます」

「おはようカオル」

「おはようスズト」

「おうアル、それにみんなもよく眠れたか?」

「すごいの!ベッドがふかふかで」

「そうそう、どの宿屋よりも良かったよ!」

 とリリとライアが言う。

「あれ?他の二人は?」

「まだ寝てるよ」

 ネアとククルはまだ寝ているらしい。

「朝飯にうるさいククルが寝過ごすなんてやっぱりベッドが最高だからだよ」

「朝ごはんも美味かったしね」

「それは何よりだな」

 それよりも美男美女の中におっさんがいるのは不思議な気分だな。


「そうだった、皆はこれが何がわかるか?」

 と桐生院が見せる。

「魔石?」

「うん、魔石だね」

「これはどんな用途で使われるのかな?」

「魔道具につけて使うよ」

「火をつけたり水を出したり」

「そうか、やはりエネルギーなんだな」

 目の付け所が違うな。簡単にエネルギーに辿り着くなんて、俺なんて未知なる石にしか思えなかったからな。

 

「あ、レイナとミオだ」

 とカオルは出迎えに行った。

「おはよー!スズトはいつも通りだね」

「まぁ、急に変わったら変だろ?」

「まぁね、今日もゴブリン狩り?」

「そうだな、みんなはどうするんだ?」

 と5人に聞いてみると、

「そうだな、村まで戻ってみようかと思ってる」

「村があるのか?って、道もわからないだろ?」

 どこに村があるかを聞くと森の上の方にすぐあると言う。

「車で行った方が早いな」

「だね」

 電車が使えればいいんだが電車はいまは点検のため運休になっている。線路が木に埋め尽くされたりしているようだ。

「そ、そうなのか…どうしたら」

「しょうがない、俺が連れていくよ」

「なら私達も!」

「俺の車は6人乗りだぞ?」

「でしたらバスを手配しますので」

「え?」

 

 と言うことで村までバスで行くことになった。

「俺はいらないんじゃ無いかな?」

「ダメだって!言い出しっぺだし」

「そ、そうなのか?!」

 なんか腑に落ちないが、一緒に行くことになった。

「ミレイさんはバスも運転出来るんですか?」

「はい!まぁ、補助で一人ついてきましたけどね」

落内オチナイと言います。よろしく」

 俺よりおっさんだからよし!

(いやぁ、肩身が狭かったよ)

 だが。落内はすぐに1番後ろの席に座り寝始める。

「うそ、これが動くの?」

「馬は?」

「そうか!魔石で!」

 とさまざまな意見を言っているが正解は一つもない。

 出発すると、もっと騒がしくなり、その内力尽きて寝るのであった。

「ったく、子供だな」

「そう?やっぱり新しいものにはドキドキするじゃ無い?」

 とカオルが言う。

「そうかもな、魔法とかか?」

「そうだ!魔法!なんで使えるの?」

「は?ステータス画面見てみろ」

「うん!見た」

 今度はカオルが子供の様な顔をしている。まぁ、実際子供だけどな。

「そこにSPってあるだろ?」

「あっ!ある!」

「それ触ってみろよ」

「うおっ!凄い!ねぇ、凄いよこれ!」

 とミオとレイナに教えて、同じく驚いている。

「スズトの使ってたのって雷魔法だよね?」

「そうだな」

「高いよ!SP40もいるじゃん!」

「え?!」

「え?」

「いやなんでも無い」

 俺は確かSP20だったはずだから実際には半額か。

「うー、悩むなぁ…スズトみたいに速く敵を倒すのもいいんだけど、力無いから剣が重いんだよね」

「あ、それならこれやるよ」

 と指輪を外して渡すと、

「え?ゆ、指輪」

「そう力の指輪だ、これで剣も軽々持てるだろ?」

「あ、あぁ、そう言うことか!あ、ありがとね!」

「あー!カオルだけずるい!あたしにもなんかちょーだい!」

「ふむ」

 と収納を見てみると知力の指輪があった。

「素早さの腕輪と知力の指輪、どっちがいい?」

「はい!私、知力の指輪!」

 とミオが持っていく。

 まぁ、どちらかと言うとミオが似合うな。

「じゃあ素早さの腕輪でいいや」

 とちょっと不貞腐れながらもうれしそうにつけるレイナ。

「あー、ブカブカ」

「フィットでちゃんと合うようになるぞ」

「「「フィット」」」

「おお!凄い」

「これなら大丈夫ね!」

「外す時は?」

「パージだな」

「「「了解です」」」

 収納に鎧や剣があるけど似たり寄ったりだしなぁ、ゴブリンキングの王冠なんてどうすんだよ。


「こっちでいいですよね?」

 ミレイさんが聞くので、

「とりあえずは東京を出て埼玉を抜けましょうか」

「はい!」

 何処までが森なのかわからないからな。

 俺は新聞を取り出し買っておいた缶コーヒーを飲みながら読んでいく。


 なかなか欲しい情報はないなぁ。

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