落書き
◼︎◼︎市を通る、ある国道は片道が3車線の大きな道路だ。
交通量が多いため、交差点は立体状になっており、国道の下のトンネルを県道が走る形になっている。
その県道に並走して、歩行者用の小さなトンネルがあった。
普段私はそこを通勤のための経路にしていたが、夜になると薄暗く、人気もないため、駆け足気味で通り抜けていた。
ある日の朝、いつものようにそのトンネルを歩いていると、
真っ赤に描かれた落書きが描かれてあることに気付いた。
落書きと言っても、単語をブロックのように立体感を出して書いているわけでもなく、隠語のような意味不明な単語を書いているわけではなかった。
ポスターカラーのような不透明で明るい赤色で、マジックペンで書かれたようだった。
拙い字でこう書いてある。
『あそびにきませんか』
『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎』(実在住所のため伏字)
人気がないため、不良が溜まりそうな場所ではあったが、今までは不思議と落書きは見たことがなかったため、すぐに目に留まった。
恐らく変な男の人が書いたのだろう、そう思ったのだが、メッセージと共に書かれていた住所が気になった。
私の家の近所だ。
住所をおおまかに記憶し、仕事の休み時間、地図アプリで調べてみる。
そこに示されたのは、山の奥にある神社だった。
近所に住んでいても、そんな神社があることは知らなかった。
父や母も知らないのではないか。
しかし、なんでそんな場所をわざわざ落書きで示す必要があったのだろうか。
最近、この辺りでは失踪事件が頻発している。
落書きが書かれたころからだ。
その事件と、この落書きには関係がない。
そう思いたい。
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