手帳

小学校の帰り、道端で手帳を見つけた。

誰かが落としたのだろう。

薄いピンク色の小さな手帳だった。


手帳を開いた。

誰が落としたのか確認するというよりも、どんなことが書いてあるのか見たいという好奇心が勝った。


しかし中には何も書いていなかった。

いや、ページ全体が真っ黒に塗りつぶされていたのだ。

よく見ると、ミミズが這ったような字が書かれているようにも見えるが、何が書いてあるかは分からなかった。

気付くと、あたりは薄暗くなっていた。

どれだけの時間、その手帳に釘付けになっていたのだろう。


私は怖くなり、元あった場所に手帳を戻し、手を合わせて帰った。


その出来事以来、落とし物の中身をあらためることはしなくなった。

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