地窓から見えたもの

高校生時代、廊下側の前から3番目の席だった。

教室は手狭なので、端の机は自ずと壁際に接する。

私の机は右側が壁と接していた。

その壁の床面と接する部分は、廊下と教室とを繋ぐ横長の地窓になっていて、夏になると換気のために常時開いたままとなっている。


授業を受けていた時、廊下から足音が聞こえた。


ヒタ…ヒタ…


靴の音とも、靴下で歩いている時の音とも違う、まるで裸足で歩いているかのような音が聞こえた。

誰かが歩いてきたのだろうか。

でもなんで裸足で?


そう思っていると、廊下の足音はちょうど、自分が座っている付近で止まった。

地窓を見下げる。

すると、真っ白な裸足の足がそこに立っていた。

こちら側につま先を向け、気をつけのように真っ直ぐこちらを向くように。


私は見てはいけないものを見たのだと思い、焦って黒板に向き直り、気づかない振りをした。


視界の端には、しばらくの間、その足が見えていた。

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