悲鳴
高校生の夏休み、部活動で泊まりがけの練習をすることになり、合宿所に泊まることになった。
深夜、私を含めた仲が良い女子5人は、合宿所内のミーティングルームに集まり、電気を消した真っ暗な部屋で怪談を話していた。
それぞれが話す怪談は、聞き手を驚かすためにかなり脚色されたものであろうと思われたが、盟子の「呪われた家」の話はかなり怖かった。
私も含め、他の4人はところどころで「ひっ」などと小さな悲鳴をあげていた。
盛り上がってきたところで私の番がやってきた。
幸か不幸か、私は今まで霊や怪異の類に遭遇したことがない。
今回は、みんなを驚かせようと思い、怪談を創作することにした。
「この合宿所で自殺した女子生徒の話です。」
とある女子生徒が、いじめられていた他の女子を庇い、次のいじめのターゲットになる。執拗に続くいじめを苦にして、その女子生徒は首を吊って死んでしまったという話だ。
この話の肝はその女子生徒が首を吊った場所だ。
「その女子生徒は……この学校……この合宿所……そして、この部屋で……」
私は私たちがいる場所の真上、電気の消えた吊り下げ式の電灯、ペンダントライトを指差す。
「ここで首を吊ったのです!」
「きゃあああああああ」
悲鳴が真っ暗な部屋中に響く。
最高のリアクションをとってくれた友人に感謝だ。
私を含め、数人の友達が笑っていた。
誰かが未だに悲鳴をあげている。
「きゃああああああああ」
まだ悲鳴はやまない。
流石に驚きすぎではないのか。
「きゃああああああああ」
私たちは薄明かりの中で目を凝らしてお互いの顔を見合った。
しかし、誰からも悲鳴が発せられている様子はない。
「きゃああああああああ」
悲鳴が止まない。
私は立ち上がり、部屋の電気を点けた。
みんながいる方を振り返る。
やはり、誰も叫んでなどいない。
友人たちはひどく怯えたような表情でこちらを見ていた。
「きゃああああああああ」
悲鳴は止まらない。
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