第3話 俺も夢の中に?
現実で、夢野さんに
zzzz
夢の中の俺は、何故か自室で腹筋している。夢の中で筋トレしても、現実に反映されないのに…。ツッコミどころが多いのが夢の特徴だよな。
何にせよ、今回は悪夢じゃないから気が楽だ。そう思った時…。
「暗城君、調子はどう?」
夢野さんが部屋の扉を開けて入ってきた。
俺は腹筋を止めてあぐらをかき、彼女を見上げる。
「何ともないが、もしかして俺うなされてた?」
うたた寝に入る前、「ヤバそうだったら入って良い」と伝えたのだ。筋トレの辛さが顔に出てたとか?
「そんな事ないよ。気持ち良さそうに寝てたね」
「じゃあどうして…?」
「2人きりで話したいと思って。夢の中なら誰にも邪魔されないから。…もしかして嫌だった?」
「そんな事ない!」
可愛い子と1対1で話せる状況を嫌がる理由はない。
「良かった♪」
話をするなら今の体勢は向かないな。場所を変えよう。
「夢野さん、俺のベッドのふちに座って良いから」
「ありがと。そうさせてもらうね」
彼女が座ったのを見届けた後、俺も続けて座る。距離は近くも遠くもない絶妙な位置を意識した。嫌われたくないからな。
「ねぇ暗城君。正直に言って欲しいんだけど、夢改善士の話信じてくれる?」
その事か。夢野さんの希望なら、正直に言うしかない。
「半信半疑ってところだ。けど、俺の悪夢を目の前で消してくれたのは事実だから、信じる方向でいる」
世話になった以上、何かお礼ができれば良いんだが…。
「そっか。信じてくれてありがとね」
彼女の笑顔にドキドキするが、貴重な時間を無駄にできない。さっきの説明ではわからなかったところを追求しよう。
「夢野さん。俺の夢に入ってる時、現実の君の体はどうなってるんだ?」
「暗城君の背中に触れたまま固まってるね。今は
つまり無防備ってことか。周りに信頼できる人がいないと夢改善は厳しいだろう。
「もし夢の中であたしが急にいなくなったら、意識が現実に引き戻された事になるからビックリしないでね」
「わかった」
今の情報は大切だから、絶対忘れないようにしよう。
「暗城君。莉央の事を悪く思わないで欲しいの」
申し訳なさそうに言う夢野さん。
「わかってるよ。彼女を怒らせたのは100%俺のせいだ。悪く思う訳がない」
幼馴染を“宇宙人”扱いした俺に問題がある。さっきの謝罪で許してくれたようには見えなかったし、何とか汚名返上したいが…。
「やっぱり暗城君は優しいね。莉央もわかってると思うけど…」
そう言った後、夢野さんは考え込む。
「学校で莉央が寝る訳ないしな~」
彼女が独り言をつぶやく。それは良いんだが、内容がサッパリだ。
「人ってね、夢の中では素直なんだよ。他人が関わらない世界だから、本性を隠す必要がないの」
「それはそうだろうな…」
「だからあたしと一緒に莉央の夢の中に入れば、莉央の事がもっとわかると思うの」
「夢野さんと一緒に? 何を言ってるんだ?」
夢の中に入れるのは、濃紺の指輪をはめている夢野の血を引く人間だけのはず。さっき夢野さんがそう言ったのに…。
「実はね、夢の中に入ってて固まってるあたしの手を握ると、一緒に入れるんだよ」
「そうなの?」
「うん。その方法で入ると、誰だろうと夢の中に入った事を覚えているの」
多分だが、空川さん達もその方法で夢の中に入った事があると思う。だからそばで夢改善士の話を聴いてても何も言わなかったのだ。
「と言っても、あたしと同じように固まっちゃうのが欠点だけどね。見守ってくれる人がいないと万が一大変だから…」
無防備の人が増えるだけだし、タイミングを選ぶ必要がある。
「でね…」
彼女がそう言った時、夢野さんの体が瞬間移動したかのように消え去った。昼休みが終わりかけるから、空川さん達が起こしたんだろう。
……なんか、俺の体が揺さぶられてる気がするぞ。意識が戻り始める。
zzzz
「暗城君起きて。昼休み終わるよ」
顔を上げると、微笑む夢野さんと目が合った。
「消えた時に莉央に起こされたの。ビックリしなかった?」
「さっき話を聴いたから大丈夫だったよ」
「なら安心だね」
そしてすぐ、5限を知らせるチャイムが鳴ったのだった。
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