第2話 夢改善士って何だ?
俺の悪夢に出てきた“黒いもやがかかった謎の存在”を、隣の席の
夢の中の彼女は「話すと長くなるから、覚えていたら教えてあげる」と言った。俺は夢を自覚できるタイプだから、起きても問題なく覚えている。
夢野さんが俺の背中に触れていた理由も合わせて訊いてみよう。
「
手を離した夢野さんは、俺に微笑みながら言った。
そばにいる彼女の友達は、俺達の様子を見守っている。
「ああ…。夢野さん、俺は夢を自覚できるからさっきの出来事はハッキリ覚えている」
「へぇ~。だったら、あたしに訊きたい事あるんじゃない?」
「あるんだが、何から訊こうか…」
寝起きだから、まだ少しぼーっとする。
「そういう事なら、あたしが少しずつ説明してあげる。あたしがさっき暗城君の夢の中に入ったのは、
「夢改善士? 初めて聴いたが?」
彼女の口からそんな胡散臭い言葉が出るとは。
「普通の人は知らないだろうね。そういうあたしも夢改善士の事を初めて知ったのは中2の時だったかな。知ってる人は多くないはずだよ」
「そうなのか。その夢改善士は何をするんだ?」
「名前の通り。見ている夢に入り込んで良い状態にするの。何をすれば良い状態になるかは夢次第だね」
さっきの俺の夢はわかりやすいな。“黒いもやがかかった謎の存在”がいなくなれば良いんだから。夢野さんはあれを消してくれたから、俺の夢は良い状態になった。
「…ちょっと待ってくれ。さっきから夢に入るって普通に言ってるが、どうやってそんな事ができるんだよ?」
この疑問が今出るぐらいだから、俺の頭はまだ働いていない…。
「これのおかげ。これを夢野の血を引く人間がはめた状態で、寝ている人に触れると入れるの」
夢野さんは、左手薬指にはめられている濃紺の指輪を見せてきた。
「なるほど。だからさっき、俺の背中に触れていたのか」
「そういう事」
今までの話は大体理解できたが、信じるかどうかは別だ。こっちの線も捨てがたい。
「すごく失礼な事を言うが、指輪の件は嘘で、実は宇宙人とかだったりしないか?」
この可能性は否定できないはず。超能力の成せる業かもしれない。
「それはない!」
そう言ったのは、夢野さんの友達の…
「私と咲夜は、同じ日の同じ病院で産まれた幼馴染なの。それからずっと一緒にいるし、宇宙人なんかじゃない!!」
「ちょっと
「だって…」
「俺が余計な事を言ったせいだ。夢野さん・空川さん、本当にすまない」
「あたしは良いんだけど…」
「……」
空川さんは許してくれたとは言い難いな。表情が険しい。
「普通は事前に夢の中に入る許可をもらってから入るけど、暗城君はすごくうなされてたからね。悪夢なのは一目瞭然だったから、勝手に入っちゃった。ごめんね」
「気にしないでくれ。俺の悪夢を消してくれて、凄く助かったよ」
世話になった俺が言う事じゃないが、夜寝る時の悪夢も消してほしいぞ。うたた寝は寝る時間が短いから、悪夢関係なく物足りないんだよ…。
しかし、夢を改善してもらうには夢野さんが隣にいないといけない。彼女を俺の部屋に上げるなんて不可能だし、夜の悪夢は諦めないとダメか?
「あたしの手が空いていれば、いつでも改善してあげるからね」
「ああ、ありがとう…」
夢野さんが隣の席である限り、俺は学校内で悪夢を見る事はない。この安心感が、残ってる眠気を刺激する。
「俺、いつも悪夢を見て寝不足なんだ。だから…」
「昼休みが終わる時に声かけるから。ヤバそうだったら入って良いよね?」
「もちろん。その時は頼むよ…」
俺は昼休み中2度目のうたた寝に入る。
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