番外編 見てしまった

どうしよう。私は見てしまった。ご主人様とふゆが

キスをしている所を・・・・・・この目で、見てしまった。

人間になって、犬の頃よりも視力がよくなったから

はっきりと見えた。あれは、間違いなく。キスをしていたよ。

「はぁーこれは美味しいです~」頬に軽く手をあて、体全体に

美味しさを表現する。犬の頃からの特技である。私は、体で

感情を表現するのが、得意だった。最初は、クルンと丸まった

尻尾をぐんぐんと左右に激しく振り出し。それが、徐々に

体全体に広がり。ゼンマイを極限までに巻いた。おもちゃの

ように。一気に部屋全体を走りだす。これが、私の犬の頃の

喜びの表現である。ママさんが、作ってくれた。美味しい

クッキーを口に沢山貪る。「こんな美味しい。クッキー

食べてた。初めてですー」「やっぱり。犬のクッキーは

物足りないのかな?」パパさんが、私に聞いてきた。

私は、しばらく考えながら。「あぁーあれは、あれで

美味しいですよ・・・・・・」実際は、味気がなく。

ただ、腹に満たされるだけだった。「まぁー犬に

味の濃いのは与えるのはダメだからなぁ。旬にめちゃくちゃ

怒られたよ・・・・・・」パパさんが、しょんぼりしだした。

ご主人様は、私達をとても可愛がってくれた。それが

私は嬉しかった。他の二人はどう思っているのか。

知らないけど・・・・・・。まぁ、多分、私と

同じ思いだと思う。「ねぇー茉莉ーふゆ来てない?」

マロンが、二階から下りながら。私に、声をかける。

「部屋にいなかった?」私が返事を返す。

「それがさぁーいないだよねぇ・・・・・・」

「そうなんだ・・・・・・」私は、しばらく考えると

ふゆの居場所に心覚えがあった。「もしかしたら

ご主人様の所かも?」「えっ?旬くんの所なの・・・・・・」

驚くマロンに、私はその理由を話す。「ふゆって寒がりでしょ?

だから、きっとご主人様の部屋のベットで暖をとっているんじゃ

ないかなーって。思うんだよねぇ」私は理由を話終えると

マロンが、渋い顔をして。「そうかもしれない・・・・・・」

どこか、テンションが下がっていた。私は「そうだ。ご主人様と

ふゆに。このクッキーを持っててあげよう」「えっ?今行くの?」

「はい。きっと、ふゆもこの美味しいクッキーを食べれば。

 暖かくなるはずです。気持ち的に」「気持ち的にって・・・・・・

 それはどうかなぁ~」「じゃあ、私が持ってくねぇ。発案者は

 私だから」私は、小皿にクッキーを数枚載せ。そのまま

 ご主人様の部屋がある。二階に駆けだす。「今は、やめた

 方がいいかもなぁー」そんなマロンの声が耳に入らず。

 私は駆けだす。私は、感情を体で表現するのが得意だ。

 私が、ご主人様の部屋の扉を開けると。私のもうない

 尻尾が下がった気がした。私は、見てしまった。

 ご主人様とふゆがキスをしている所を。それを見た。

 私は、なぜか悲しい気持ちになっていた。

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