瞳閉じて /KAC20245(ジャンル:異世界ファンタジー)

 瞳閉じて、感じられる温もり。

 一度は失くしたその感覚が、何よりも心地よい。

 瞳閉じて、そして伝えて。

 貴方がそばにいることを。

 貴方が、私と共にあることを。





「んっ……」


 目を開けたとき、最初に飛び込んできたのは、柔らかな陽の光だった。

 静かな、そして普通の朝。

 ただ、自分の中では――新しい朝だった。


「起きたのか」


 不寝番をしていたのだろう。彼が小枝を抱えて声をかけてきた。


「うん。おはよ」

「よく眠れたか?」

「うんっ」


 眠れたこと自体が嬉しくて笑う。

 眠れたの自体――いつ以来なのか。


 少女は――生贄だった。

 魔に捧げられたわけではない。


 神に捧げられた贄だ。


 この世界を維持する神に捧げられた、百年に一度の贄。

 神々の揺り籠と呼ばれる聖域で一年を過ごし、身を清められて――神への捧げものとなる。

 その、はずだった。


 だが、その清めとは、人間でなくなること。


 最初に失ったのは言葉。

 すぐに味覚、嗅覚。

 わずか数日で、睡眠も食事も不要になった。

 さらには痛みなどの痛覚を含めた、触覚。

 そして視覚、聴覚、


 そして――最後に心まで失う、そのはずだった。


 それを良しとしなかったのが――彼だ。


「そっか。あ、朝食もうすぐだけど……お腹、すいてるよな?」


 少女が返事をする前に、お腹が「くぅ」と自己主張した。一瞬の沈黙の後、彼が必死に笑いをこらえ、少女は真っ赤になる。


「しょ、しょーがないじゃない。久しぶりの食事だったから、全然足りなかったんだもんっ」


 彼が揺り籠から少女を連れ出して半年。

 突然、少女の全感覚が戻った。

 それは文字通りの奇跡だったが、一体彼が何をしたのか、少女はわかっていない。

 ただ、彼がとても近くに感じられて――突然、すべてが戻ったのだ。

 

 そんなわけで、昨夜の夕食は少女も食べたのだが、ありあわせの材料で作ったため、少女が嫌いなキノコが入っていたのである。

 なので、実はあまり食べられなかったというのもある。


「待ってろ。もうすぐ出来るから」

「あ、手伝うよ、……ふにゃっ!?」

「ちょ!?」


 少女が立ち上がり、一歩踏み出そうとして、いきなり躓いた。幸い、彼が近くにいたので、抱きつくような格好で、転倒を免れる。


「大丈夫か? もしかしてまだ、呪いの影響が残ってるのか?」


 少女はそれに答えず――ただ、彼に抱き着いた。


「うん。大丈夫、大丈夫だよ。目を閉じてても、貴方が分かるもの」

「お前……」

「貴方が一緒にいる。なら、もう私は自分を諦めない。だから、ずっと一緒にいて。私を、離さないで」


 それに対して、彼は少しきついと思えるほどの力で抱きしめてくれて。


「ああ、大丈夫だ。俺はもう、絶対にお前を離さない。たとえ神様だろうが、なんだろうが、な」

「うん、約束、だよ?」


 それは滅びに瀕した世界の最後の希望か。

 神々に抗う少年と少女の旅の行く末にあるものは――。


――――――――――――――――――――――――――――――――

無理矢理なKAC参加ネタ。

そしてこんなところに入れる時点で続きを書く気がない……というか。

これに関しては書く必要がありません。

なぜかというと、これ自体は自サイトのコピペから書き直ししたもので、これ自体は元はとあるゲームの二次創作なんです(ぉぃ

なので当該作品をやったことある人なら、そもそもこの二人が誰だかは多分すぐわかるかと(w

多少は設定いじってますが、ほとんどそのままだし。

気になる方はコメントか近況ノートで聞いてください(笑)

ほとんどこのままの二人がメインのゲームです。

ちなみに最近になってリマスターされたので最新ハードでプレイできます(w


なお、タイトルの『瞳閉じて』はZARDのシングルが元ネタです。

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