第5話ー勇気出してinステージ出演3

 ここで、思った。

 アヤカは、キヨテルに、もっと、ステージ出演させた方が、良いと思った。それは、芸能人になりたがっていたキヨテルのためとも思った。

 …

 だが、どうすれば良いのかとも悩んだ。

 アヤカは、ある日、京急上大岡駅の近所の角川町文化会館で、こんなチラシを貰った。

「角川町文化のつどいー朗読発表会」

 なんてあった。

 そうだ、と思った。

 キヨテルのステージ出演は、次は、「朗読発表会」と思った。

 そうだ、と思った。

「新橋イチローの小説『幼馴染』を朗読させよう」

 と心に決めたのだ。

 …

 そして、朗読発表会の当日だった。

「それでは、新橋イチローさんの小説『幼馴染』を朗読してもらいます」

 となった。

 …

ー『京急堀之内駅に着いた。


 隣のホームからは、「かもめがとんだ。かもめがとんだ。あなたは、一人でいきていくのね」と渡辺真知子『かもめが翔んだ日」のメロディーが流れた。


 そして、「ヒロタカ、少し、降りようか」と言って、堀之内駅から志帆は、ヒロタカと二人で歩いた。


 もう10時手前だから、あたりは、真っ暗だった。


 時々、居酒屋の明かりと店内からの喧騒が聞こえるが、二人は、ただ、てくてくと歩いていた。


 志帆は、どうしようと思った。


 しかし、ヒロタカは、ただ、「堀之内って、こんなところか」と言って歩いていた。「そう、私、子供の頃、この辺りに住んでいたんだよ」と志帆は、言った。その時、志帆は、声が詰まった。そして、涙がポロポロ出てきた。


「あれ、オレ、何か酷いこと言った?」


「いや、。そうでも…」


「そうか?」


「ヒロタカのせいじゃないよ」


「なら良いけど」


「堀之内に来たって、もう、駅のプラットフォームには、渡辺真知子の歌しかないのかって思って」


「まあ、そうだよね」


「私、この辺りに住んでいた時、渡辺真知子や山口百恵みたいな歌手に憧れていて、歌手になるのが、夢だった」


「うん」


「だけど、歌手になれなくて、そして、高校、大学と進んで、そのまま会社員になっているけど、大人になったら、みんなと適当に遊んで楽しんでいたけど、周りは、みんな、結婚して、私、取り残されたわ」


「そうだね」


 暫く、堀之内駅から、国道を二人は歩いていた。


 手をつないで、歩いていた。


 ダンプトラックが、バンと大きな音を立てて、北へ走って行った。


 その時、ヒロタカは、こう言った。


「オレさ」


「何?ヒロタカ?」


「オレ、自分のお店を持つのが、夢なんだ。無謀だろう?」


「そんなことないよ」


「そうか?」


「私は、仕事ができて、会社のプロジェクトをしたよ」


 そうだ、志帆は、化粧品の開発の時、プレゼンテーションを企画をした。


 だが、その時、後で、それは、違う同僚の担当になったのだ。』ー

 

 拍手が沸いた。

 キヨテルは、アヤカのアドバイスを聴いて、新橋イチローの小説『幼馴染』を朗読して良かったと感じた。

 後から、感想があって、「声が通っている」とコメントが書いていた。

 一瞬だけ、キヨテルは、声優になった感じがしたのだが。

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