第35話同志·埼玉県富士見市

野球の練習試合に負けてしまったが、古賀は参加してくれたお礼に加田木さんの家でバッテリーの充電をしてもらうことになった。

「申し訳ない…、当然みたいに頼んで。」

「いえいえ、こちらこそ急に野球してなんて頼んで申し訳ない…。」

加田木さんは独身の四十一歳、妻子持ちだが仕事の都合で富士見市へ単身赴任している。今は借りている安アパートで一人暮らしをしている。

「へぇ、じゃあ群馬から来たのですか。」

「あぁ、子どもが埼玉県へ遊びに来る時は私が車で迎えに来て、ドライブをするのですよ。」

「いいですね〜」

自分も妻子を置いて旅をしているので、子どもと久しぶりに会えたら……ということを想像していた。

「おや、あれは……?」

古賀はテーブルに置いてある封筒に気づいた。

「あぁ、これは原稿ですよ。」

「え?原稿って…小説の?」

「はい…、実は休みの日に執筆をするのが趣味でして、まだ完成とまではいってないのです…。」

古賀は原稿にひとしきり目を通すと、加田木に言った。

「面白い!登場人物が表情よく書かれているよ。」

「ホントですか!?ありがとうございます!」

それから古賀と加田木は小説の顛末について、大いに語り合った。


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