第26話赤レンガと迷子(2)·神奈川県中区

横浜赤レンガ倉庫で迷子と会った古賀は、地図を頼りにお客様センターへ辿り着いた。迷子の両親を呼び出してもらい、五分後に迷子の両親と妹がやってきた。

「心配したぞ貴一きいち、勝手に走っていったらだめだろ!」

父親はしかりながらも、息子の貴一を抱きしめた。母親が古賀に頭を下げた。

「貴一がご迷惑をおかけしました、本当にすいません…。」

「ごめんなさい…」

母につられて妹が頭を下げた。

「あれ?貴一、お前なんでクリームがついているんだ?」

父親が貴一の口元を見て気づいた。古賀が事情を説明すると、父親はカバンから財布を取り出して五百円硬貨を渡した。

「いえ、そんなお金なんて…」

「息子が本当にお世話になりました、そのお礼です!受け取ってください!」

古賀は申し訳なく五百円硬貨を受け取った。すると父親が古賀の顔を改めて見て言った。

「失礼ですが、もしかして作家の古賀さんですか?」

「あっ、はい!古賀です」

「いやぁ、あなたの小説よかったよ!また新作出たら買いますね!!」

そして迷子は古賀に手を振りながら、両親·妹と一緒に去っていった…。



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