第18話 異変
数時間後、俺はやっと戦場から解放され、急いで山小屋に向かった。
もう日は沈み、辺りは暗くなっていた。
リヴィアは大丈夫だろうか……。
俺は山小屋に着くと、すぐに山小屋の扉を開いた。
「────ど、どうでしたか!? どこか怪我してませんよね!?」
山小屋の扉を開けると、すぐにリヴィアが飛び込んできた。
この扉を開ける度に、すぐリヴィアが目の前にいるのは気の所為だろうか……。
俺は違和感を覚えつつも、リヴィアを両手で受け止める。
「俺は大丈夫だけど……でも……ね……?」
俺はリヴィアにそう言いながらも、自分の背後をしきりに気にしてしまう。
俺の背後には、ピッタリと今もあの災獣が着いてきていた。
あの災獣と言うのは、あの戦場で散々に暴れ回ったあの凶悪な災獣だ。
そんなバケモノが俺に何故か着いてきてしまっていた。
俺に危害を与えるつもりはなさそうだけど、家まで着いてこられるのは流石に恐怖を感じてしまう。
リヴィアも怖がるかもしれないし、いつ凶暴になって誰かに牙を剥くとも分からない。
「あれ? どうしたんですか? 後ろに誰かいるんですか?」
すると、リヴィアは俺の背後をじっと見つめる。
「えっ!? そ、そうだな……後ろには……うん……俺のペットがいて……」
俺は心を見通すかのようなリヴィアの行動に驚きつつも、リヴィアにそのことを隠しきれないことを悟ってしまう。
そうだよな……。
この家より大きなバケモノを隠し通せるわけないよな……。
俺は息をゴクリと飲み込むと、背後の景色をリヴィアに見せた。
「……ああ、災獣ですか。キースさんに着いてきたんですか?」
すると、リヴィアは驚くでも怖がるでもなく、ただその災獣を見つめながらそう言った。
「え? リヴィアは……コイツが怖くないのか?」
俺はリヴィアの呆気ない反応に驚いてしまう。
リヴィアってまだ幼い女の子だよな?
こんな牙剥き出しの超巨大のバケモノ、見た瞬間に気絶するくらい怖いはずなのに……。
「そうですね……この子は私の一部ですから。怖いとは思いません」
リヴィアは無表情のまま、後ろにいる災獣に手を伸ばす。
すると、災獣はそれに応えるようにリヴィアの手を顔に触れさせた。
「一部って……どういう……」
俺はリヴィアの言葉に困惑してしまう。
このバケモノがリヴィアの一部……?
「ふふっ、まぁ良いじゃないですか。細かいことは」
リヴィアは小さく笑うと、そのまま扉を閉めてしまった。
なぜだか、リヴィアのその瞳を見ると俺は疑問を言葉にすることは出来なかった。
******
「7000Pt!? すごいです! すごいですよ!! キースさん!」
俺が石板の数字をリヴィアに見せると、リヴィアは嬉しそうに飛び跳ねた。
リヴィアの嬉しそうな顔を見て、俺の頬が緩んでしまう。
良かった。こんなに喜んでくれるとは思わなかった。
リヴィアを成長させる目的もさることながら、リヴィアの嬉しそうな顔を見られる。
ここまで一石二鳥なことは今までにないことだ。
「それでだけど、また年齢を強化しようと思うんだけど……どうだ?」
嬉しそうにはしゃぐリヴィアを横目に、俺はそう言った。
「はい! そうですね! これで私、もっとキースさんに近づけますね!」
リヴィアは俺の目をじっと見つめながら、そう言った。
うんうん……俺に近づけるか……。
変な目標の定め方だが、リヴィアもリヴィアなりに強くなろうとしてくれているんだな。
流石主人公と言うべきか、素晴らしい上昇志向が備わっているようだ。
俺はうんうんと頷きながら、石板をその手で弄る。
そう言えば……リヴィアのステータスはどうなってるんだろう。
俺は石板の邪神強化のボタンを押してみる。
──────────────────────────
リヴィア
LV.24 (強化可能)
年齢 15 (強化可能)
魔法 85 (強化可能)
身体 15 (強化可能)
魅力 67 (強化可能)
信者 1058
残虐 800 (強化可能)
独占 9999
────────────────────────────
おお、前回と少し変わってるな。
レベルも4くらいは上がってるし、他のステータスも物凄い成長具合だ。
これは一般人ならば神童を遥かに超える突然変異クラスの成長スピードだ。
流石主人公。何もしてなくても、こんなに成長するのか……。
……ん? 普通人間って何もしなくても成長するもんだっけ……?
俺は違和感を覚えつつも、年齢強化ボタンを押す。
すると、確認画面が出現して、はいといいえの二択を迫られる。
「よし。リヴィア。年齢を強化するからな」
「はい! お願いします! キースさん!」
俺はそう確認すると、はいボタンをタップした。
辺りがいつものように紫色に輝き、リヴィアの方から煙が出てくる。
いつものソシャゲみたいな演出と、毎度の眩しい光に俺の目は潰されてしまう。
……強化してる感じがあって良い演出なんだけど、光が眩しすぎて目が潰れるのは考えものだな。
俺はそんなことを考えながらも、回復した目を開く。
「…………あれ?」
目を開くと、少し身長の伸びたリヴィアがいた。
しかし、そのリヴィアには明らかな違和感があった。
「? どうかしましたか? キースさん?」
すると、キョトンとした顔でリヴィアが俺の方を見つめてくる。
「り、リヴィア……? 頭から……角が……」
俺は震える手を抑えながら、リヴィアの頭を指さした。
リヴィアの頭には、銀髪を縫って羊のような2本の角が生えていた。
まだ小さくも、確かな存在感を放つ2本の角。
あ、あれ……? 普通人間って……角は生えないよな……?
リヴィアって、主人公なんだから人間なんだよな?
冷たい嫌な汗が、俺の背中を流れるのが分かった。
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