第11話 信者数
「───ふっふっふっ! やはり、あなたは来ると思ってましたよ! あなたは邪神様に認められた使徒様なんですから!」
古ぼけた教会の扉を開けると、そこにはめちゃくちゃドヤ顔の金髪シスターが待ち構えていた。
悔しいが、この金髪シスターの言う通りだった。
俺はあの信仰ポイント欲しさに、再びこの怪しげな教会を訪れていた。
あの信仰ポイントはリヴィアが成長する上で、あまりに有効的すぎる手段だ。
信仰ポイントさえあれば、リヴィアは恐ろしいほどのスピードで成長ができる。
そうすれば、世界を救うのも容易になるだろう。
「いや、世界を滅ぼすとかはしないからな? 俺はあくまで信仰ポイントの増やし方を聞きに来ただけだ」
俺は嬉しそうな金髪シスターを手で静止し、そう言った。
「え……? せ、世界を……滅ぼさないんですか?」
すると、金髪シスターは唖然としたような表情で俺を見つめる。
このシスターは世界を滅ぼすことが当たり前だと思ってるのか?
どんな教育を受けたら、世界を滅ぼすことが目的みたいになるんだよ……。
「ああ、信仰ポイントの増やし方だけ教えてくれ。もっと他に方法はあるだろ? そんな物騒な方法じゃないやつが……」
「そ、そうですね……。使徒様があくまでも世界を滅ぼす気がなくて、信仰ポイントのみが欲しいとなれば、信者数を増やすのが一番効果的ですね」
金髪シスターはどこからか取り出した謎の分厚い本を開き、その一ページを指さした。
「ここに信者を一人増やすと1Pt獲得できると書いてあります。あと、人を1人殺すと10Ptとも書いてあります」
増やすよりも減らした方が10倍ポイントが貰えるのか……。
邪神教ってのは、想像以上にヤバい宗教だな。
まぁ、そんなことはこの子を見れば分かりきってたんだけど……。
「信者数って言ってもなぁ……。こんな宗教を信じようとする人間なんて、この世界に10人いれば多い方だろ……」
俺は深い溜息を吐きながら、そう呟いた。
そうだ。この宗教は終わっている。
目的は世界を滅ぼすことだし、日々の活動は村を焼いたり、街を略奪したり、主に破壊行為をすることだ。
そんな宗教に入りたいと思う人間はいない。
つまり、信者数を増やして信仰ポイントを獲得するのは絶望的というわけだ。
「あ、そう言えば、私たちは1000年前、表向きは聖教会のような人気な宗教のフリをして、信者を掻き集めてましたよ。信じれば天国に行けるとか、適当言ってたらポンポン信者が集まりました。まぁ、その後、私たちの目的がバレてボコボコにされましたけど……」
すると、金髪シスターはそんな俺を見兼ねてか、そうとんでもないことを言い出した。
「え……? 今……なんて……?」
金髪シスターから飛び出てきた言葉に、俺は思わず絶句してしまう。
聖教会の教典によれば、ちょうど金髪シスターの言った1000年前に、聖教会ととある邪教との間に激しい戦いがあったらしい。
あの時の聖教とその邪教は、ほぼ世界を二分しており、ほとんどの面において二つの宗教は互角だったと記されていた。
しかし、邪教徒ネルヴィアの裏切りが起点となり、聖教会は邪教に勝利を収めた。
その過程で邪教のシンボルや紋章は、世界から尽くを消し去られた。
そんなことが聖教会の聖典の隅っこには記されていた。
しかし、誰もが違和感を持ったに違いない。
何故、世界滅亡を目的にする邪教がそこまでの支持を集めることができたのか。
どうして、世界を二分するほどに、信者を掻き集めることができたのか。
この子の話が本当なら……普通に嘘ついて信者数を集めてたことになるな。
「ま、まぁつまり……教義を偽装すれば、信者を増やせるってことだな?」
俺は困惑しながらも、金髪シスターにそう確認する、
「はい。そうすれば、グレイデア様に力を貸しているとも知らずに、愚かな民草は私たちの信仰ポイントになります。最後は洗脳して、聖教会に突撃させましょう!」
金髪シスターは満面の笑みで、そう言い放った。
「う、うん。洗脳するのはやめにしようか」
「えー、そうですか? 楽しいんですけどね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。