⑫孤軍奮闘
細い
赤い肉壁が行く手を
頭上を
馬鹿みたいに長大な両刃の剣が風を斬り裂き、信じがたいほど重い音が
ヘドロの化け物といい勝負である。
間違っても手に握った
暴力的な種族の格差は明らかである。
それに加えて、
というのも、裏切り者の青鬼から奪った半月刀は、お世辞にも物が良くなかったのだ。
すでに青鬼を一人と、
まさしく下っ端にあつらえむきの武器というわけだ。
かといって赤鬼のアホほど長く重い得物をあつかえるわけもなく、
しかし種族差という観点から述べるならば、弱者には弱者なりの利点がある。
地獄に迷い込んで数日、彼のそばにはいつも最良の師がいた。
大振りな刃の
猿のごとき
やはり刃はほとんど通らない。しかしそれでよかった。
その一瞬を見逃さず片足を抱えこみ、ひと息に見張り台からひっくり落とす。
高所を制するのは戦術の基本である。
しかしいよいよ役立たずになった刃は、
なんとか切り離しに成功した頃には、下の連中もまた正体不明の侵入者に対して仕切り直していた。
突然、無数の黒い光の線が走った。
見張り台すら
甲板にずらりと並べられた
第二射がつがえられている間に視線を遠方へと投げれば、短い舌打ちが口をついて出る。
トトたちを乗せた貿易船が、
ヘドロの化け物に
あちらの
いくら
対艦用の武器だけあって素材の
大きく腕を振りかぶり、ここまで連れ添った半月刀と一方的な別れを告げる。
散々に
二度目の
その隙に
改めて、やや怒りのにじんだ号令が発せられ、同時に
帆にはいくつもの大穴が空いた。
赤鬼たちは歯ぎしりした。
侵入者が帆から離れない以上、次の矢を撃つことはできない。
そんな彼らの
すると、鋼鉄の銛はその
いわずもがな、
誰もが天を
――だがしかし、本当に彼らを
突如として、赤い
船の
まるで夜の闇を人間の
光をまったく反射しない黒々とした刃がひるがえり、ひとつ、またひとつと
たて続けに
「アイツは……ッ」
ひと目見た瞬間に、そいつのありえない正体に気づいたからだ。
アレはおそらく、先ほどまでヘドロの
しかし今では、指先から髪の一本にいたるまで、
そしてその
「
――――――――――
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