⑦縄抜けの術
「どうしてこんなことに……」
島民たちは
特に海賊の
しかし、
しおれている理由のおおもとは、期待が
青鬼が、青鬼を裏切った。
同族にこっぴどく出し抜かれたという事実が、彼らにはよほどの衝撃だったらしい。
先ほどから「なぜ、なぜ……」と、自分の尾を追う犬のごとく終わりのない問いを繰り返している。
自ら高潔を
さらに言えば、親が子を、弟が兄を、
それが
ここからは勝手な憶測だが、おそらく
それがたとえ
日ノ本でも、いまだに交易へやってくる
自分とは異なるモノを人は恐れ、本能的に遠ざけたがる。
その相手が強大であればあればあるほど、弱者側の団結は強固になるものだ。
青鬼たちの困惑と失意の
しかしだからといって、彼らの
その役割にあたる古参の島民たちは、
こちらは裏切り者が同族であったという以前に、ともに暮らした仲間の情が、怒りと困惑に
どちらにせよ、彼らが立ち上がるまで付き合っている
「どっこい」
ゴキリ、と
部屋中の青鬼たちから異様なモノを見る目をむけられながら、身をよじり、なに食わぬ顔で手足の縄を解く。
そのあまりにも自然な
「あ、あんた……」
驚愕のままに言葉を発しようとした青年を、初老の航海士が小突いて黙らせる。
それを尻目に、
左右に二人立っている。
地獄では出入口に見張りを二人一組で配置するのが
身じろぐ音の重さから、どちらも
赤鬼よりは小柄な彼らも、
十中八九、ダネルという男の指示であろう。
これが青鬼であったならもっと楽にことが済んだものを、と室内にいる島民にはいささか失礼なことを考えながら、拾った情報を即座に組み立てていく。
かすかに金属がこすれる気配に、両者とも半月刀を
部屋には
脱出に際し、これを
ふむふむ、とひとりで
「小僧、テメェなにをおっぱじめる気だ」
たった今しがた身内をひとり失ったばかりである。
――なるほど賢明な、老人らしい腰の抜けた判断である。
もしもこの状況で彼らが抵抗の意志をみせれば、少なくない数の死者が増えるのは必至である。
だがしかし、ならばこのままヤツらの言いなりとなって、むざむざ赤鬼どもに
――そう言いかけて、
死ぬまで伊賀の里に縛られ続けた自分が言えた立場ではない。
たとえどれほど自由を失おうとも、命だけは奪われたくないと保身に走ってしまう気持ちは、誰よりも理解している。
なにより、
正直に
完全なる部外者である。
したがって彼らが自由の闘争によって命を投げうつより、他者に束縛された明日を選ぶというのであれば、口を
しかしその決定に、自分があわせてやる義務もまた、
「俺は西大陸へ行くぞ」
扉から離れて、
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