⑥絶望の転換点
――
これから、この船に乗っている者だけでなく、島の住民たちも
一度でも
しかしながら、彼の胸に同情や罪悪感といったものは微塵もなかった。
仮にも五年の歳月をともに過ごしたというのに、むしろ清々しいと言わんばかりに、男の心は満ち足りていた。
「たいした忠誠心ね」
ダネルの
「よく情が移らずにいられたもんだわ」
軽蔑をふくんだ感想に、彼もまたそれ以上の軽蔑を返した。
「混ざり者も同胞だ、ってか? 笑わせる。あんな言葉を本気で信じたのか」
「…………」
「
腹の底に
「国にいた時、ヤツらが
レイラは否定することなく押し黙った。
男は気分を良くして、大海へむかって高々と両腕を広げた。
「だがこれですべてが
艦隊はもうすぐそこまで迫っていた。
甲板で船を操る者たちの赤黒い屈強な
彼らは、
まだいくらか距離があるというのに、貿易船で待ち受ける青鬼たちは、幼い頃より記憶に刻まれた
「世界の勢力図が塗り替わるぞ! 俺たちの居るこの場所が、新しい時代の転換点となる!」
東西の均衡を
そのほとばしる熱情にあてられ、同じく計画に従事していた者たちの何人かは、次第にほの暗い
「……興味ないわ」
レイラは、表情を硬くこわばらせながらも、
「私は、自分の欲しい物が手に入れば、それでいいの」
「分かっている。お前のお望みはこれだろう?」
ダネルは、銀色の液体が入った
「こんなもののために一生破れぬ誓いをその身に受けるとは。可愛いほど、
「ほっといて」
レイラは大事そうに小瓶を仕舞うと、ダネルの耳ざわりな笑い声を振り払うように、足早に船倉へと降りていった。
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