⑱不穏な影
しばらくして、食堂にレイラが戻ってきた。
(……お?)
島の女衆にずいぶんと長い時間捕まっていたらしく、薄汚れたボロ雑巾のようだった姿が、頭のてっぺんからつま先まで見違えるように磨かれている。
トトはすでにしゃべり疲れて一足先に夢の世界へと旅立っており、無防備に腹を
(……なんだ、また面倒事か?)
せっかく晴れやかな
原因は、隣りに立つ男のせいであるようだった。
「あれ、あの子は……」
ふいに、背後の席でさめざめとむせび泣いていた若い青鬼の青年が声をあげた。
「よかった、知り合いと再会できたんだな」
そう言って、ことさら感動したように鼻をすする。
その口振りは、どこか他人事のようであった。
「知り合いって、アンタらはあいつと同じ船に乗っとったんだろう?」
「ん? いいや、彼女は俺たちが海賊に捕まる前から、あの砦にひとりだけ
「……なに?」
「君たちと逃げる少し前に、
「…………」
そういえば彼女はあの日、砦の二階の窓から飛びおりてきた。
よく考えればおかしな話である。
レイラと話しこんでいる男は、
彼は人好きのする笑みを浮かべながら、少女の手をとり再び食堂を出ていった。
「ふーん……」
彼女は始終、浮かない顔であった。
それは護衛ではなく、忍の仕事だと思ったのだ。
ただ、彼女は明日、西大陸行きの船に乗るのだろうかと、
【第二章・了】
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