⑫混じり者
酒の
もうひとりの旅の連れも、いつの間にやら島の若い女たちに捕まっていた。
ズタ袋のような彼女の衣服を新調してくれるというのだ。
レイラはしどろもどろになって百面相を披露した後、そのまま彼女たちの熱気にもみくちゃにされて食堂を出ていった。
束になった女ほど面倒なものはないな、と
酒宴は弾むような盛りあがりである。
その
髪も肌もすべてが青白い島民たちに混ざって、赤みがかった小麦色の肌の鬼がいる。
すわ赤鬼か、と
しかしよくよく観てみると、彼らの体躯はがっしりとたくましい筋肉に覆われてはいるものの、赤鬼の強靭な肉体に比べればやや頼りなく、額から生えた角も一本であった。
まるで、赤鬼と青鬼の特徴を半分ずつ足して割ったような見かけである。
「混じり者を見たのははじめてかい?」
片隅で壁へもたれていた
軽く礼を言って受け取りながら、口はつけずに、
彼もまた、異端な容姿の者であった。
瞳こそ青鬼らしい透きとおるような青紫だが、
「混じり者?」
「たまにな、できちまうのさ。俺らみたいな、望まれないはみだし者が」
ああ、と
ただ、赤鬼と青鬼、種族が違う者同士でも
男もまた、過度に嘆くそぶりもなく、淡々と彼らの身の上に起きた事実のみを語った。
赤鬼か、それ以外か。
赤鬼として産まれることができなかった命の価値は、牛馬とほぼ同列であり、働けなくなった者から順に死んでいく。
逆らえば殺され、病や怪我で使い物にならなくなれば放り捨てられ、老いれば衣食住を取り上げられる。
劣等種として産まれた瞬間から、降りかかる理不尽に
その身に赤鬼の血が半分流れているとはいえ、奴隷と同じあつかいである彼らは、青鬼たちからは
ありふれた、よくある話だ。
男は、
「ここはいい。こんな
食堂の中央で、どっと歓声があがった。
顔を上気させた酔っぱらいたちが、食卓の上でにわかに腕と腕を組み合わせ、力比べをはじめたのである。
青鬼よりもひとまわり体格の良い混じり者の男が、挑戦者を次々と沈めるたび、わっと
彼らの間に、血の
観衆の熱気が
彼らの閉塞的な故郷では決して繰り広げられることのない愉快な余興を目の当たりにして、ようやく
彼らは皆、命がけで自由を求め、無謀な賭けに勝ったのだ。
伊賀の里で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます