⑪鉄壁の罠
案内された食堂は、すでに陽気なにぎわいで
島民共用の食事場らしく、大広間ほどではないが、こちらもかなり広々としている。
内装はすべて洞窟内の岩を削り出したもので、床から直接生えたテーブルや椅子には、明るい色調の厚手の敷布が掛けられ、細身の青鬼たちが
奥では、額に汗を浮かべた女たちが、もうもうと湯気をあげる大鍋を掻きまわしながら、岩壁を四角にくり抜いた棚から手際よく食材を取り出しては細かく切り刻むという作業を繰り返している。
たまにやかましく
皆、暴虐な国の呪縛から新たに逃げおおせた同胞を、我がことのように歓迎していた。
早くも出来あがった男衆に絡まれ、困惑した面持ちで身を縮こまらせているのは、
こちらもやや気後れしつつ雑踏に足を踏み入れれば、入り口近くにいた島民たちが次々に島長へ声をかけた。
ずいぶんと慕われているらしい。
やはりここの住人にとっても人間は見慣れない存在らしく、物珍しげな視線が
あからさまな敵意はないが、
ここにいる者たちもかつては奴隷であったと考えれば、当然の反応であろう。
それでも大仰に騒ぎたてて追い払おうとする者がいないのは、ひとえに自分たちの
しかし
この奇妙な世界における人間の立ち位置をいまいち把握できていない現状では、なれなれしく詰め寄られてもどのように対応してよいものか困る。
よもや「自分は死んだはずなのだが、気づけば全裸で赤鬼の砦にいたんだ」などと、あられもない真実を語るわけにもいくまい。
沈黙は金、というわけだ。
会話に思考を割かなくてもよくなった分、
まず最初に気になったのは彼らの雰囲気である。
レイラをふくめ、ここに来るまでに出会った青鬼たちは、誰もが一様に小汚くやせ細り、薄暗い雨雲を丸ごと
しかしここの住人は、心の底から幸せが弾けたように、声をあげて笑うのだ。
彼らを見ていると、まるで
洞窟内の華やかな内装や、色とりどりの装飾品が、そのような錯覚に拍車をかけた。
しかし
雑多な空間に見えて、その内部構造は堅固な
わざと狭く入り組んで掘られた通路には、随所に分厚い円盤状の
また、部屋の壁には飾りにみたてた小さな穴がいくつも開いているのだが、有事にはこれが
他にも、なにげない置物がよくよく見ると武器であったり、天井につるされた豪華な照明が、綱を切れば落下するようになっていたりと、忍び屋敷さながらの工夫が各所に見られた。
赤鬼の砦よりもよほどえげつない用意周到ぶりである。
このように挙げつらねると、普通の者ならばだまされたような嫌な気持ちが
彼らにとってこの島は、まさしく
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