第二章 泳ぐ極楽島
①ぎすぎすトーク
戦国時代における死生観というものは、仏教の経典によるところが大きい。
かくいう
もちろん本心から
とはいえ、たらたらと長ったらしい僧侶の
だがしかし、
「ひょろっちいな……」
「……なによ?」
青鬼の少女が
小さな帆かけ船の上である。甲板の端と端に離れて座っても、すぐに手が届く距離だ。
少女にとってはそれがどうも居心地が悪いらしい。
警戒した様子で、
仮にも命の恩人に失礼な、と皮肉めいた気持ちがひらめいた。
しかし気を悪くすることはない。心を許していないのはお互いさまであった。
赤鬼の砦はすでに水平線のむこうへ遠ざかり、ようやく
あらためて
たしかに、赤鬼どもの剛腕は
みすぼらしいボロ布からのぞく彼女の手足は細く、肌は透けるように白い。
小ぶりな耳は先の方が尖っており、青みがかった
帆をはためかせる
――裏を返せば、この青い原石は、
(もったいないのう……)
これまで、あまり良い暮らしをしてこなかったのだろう。
「あんまりじろじろ見ないで」
少女は
あの騒動の最中、がめつくも海賊から金をくすねた娘だけあって、内面は
均整のとれた容姿よりも、よっぽど好ましい
「こいつは悪かった。
「……私だって、角の無い男は初めて見たわ。……耳も変な形だし」
なるほど、過度な警戒の理由はそういうわけもあったか。
「人間を見たことはねェか?」
「ニンゲン……? 知らないわ。アンタみたいな種族、見たことも聞いたこともない」
ほー、と
ネズミも似たようなことを口にしていたが、やはり
幽界には亡者の罪に応じていくつかの階層があるというが、よほど
しかしまあ、それならばそれで構わなかった。
会いたくない相手は山ほどいても、死してなお逢いたい相手など、ひとりもいやしないのだから。
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