第11話 『10話 フェンリルの強さ』

『10話 フェンリルの強さ』



 フェンリルの大きさは、人の体と比べて二倍の大きさはあり、犬型の獣であった。


 スマッシュが最初にフェンリルの胴体に、剣で切りかかったが、フェンリルからしたら、まるで遅く足の爪で、人がハエを叩くようにして、スマッシュを叩いたら、スマッシュの体は地面に押しつぶされていた。


 ダイアは魔法が得意なため、フェンリルに対して風魔法のカマイタチを放ったものの、体にはかすり傷もつかない。


 ダイアの体に向けて突進して吹き飛ばした。


 トニックは剣スキルのフェザーカッターで切りかかると、フェンリルの毛すら切れないで牙で何度も噛まれ、見動きできない状態になった。


 他の冒険者も同じように軽くフェンリルに倒されていて、フェンリルからしたら相手にならないといった風であった。




「なんて強さだ……」


「俺の勝てる魔物じゃなかった……」




 もはや死を覚悟したトニックとスマッシュは戦った相手の強さを今頃わかり、緊急クエストに来たことを後悔した。


 なぜ来たのか、冒険者レベルをアップ出来ると聞いたからもあり、悔やんだ。
















◇平原




 俺は前進していた足を止め、恐ろしい魔力を感じ、後方に体を振り向かせると、キアラは何かあったのかと振り向く。




「タケダ様、後ろに何か?」


「今、一瞬だが後ろの方で魔物の強力な魔力を感じた」


「ええっ、フェンリルですか?」


「フェンリルだろう。奴は前にはいない。俺達の後ろにいる」




 逆だった。


 前ではなく後ろにいる。




「あははは、フェンリルはもっと先だ。この先の平原にいるんだよ!」


「タケダ、橋は凄かったのは認める。しかし適当なことを言うな!」




 俺は全員に向けて話したが、他の冒険者は聞く耳を持たなく、あれだけ絶賛した橋の件は忘れていた。


 中にはそのまま前進していく者、笑う者もいて俺を無視したのは自分の冒険者ランクをアップさせたい欲望からだった。


 


「みんな無視してますが」


「キアラは俺から離れるな。密着してろ」


「密着!」




 密着と言ったらキアラはおっぱいを背中に押し当てる。


 そういう意味ではなかったが。


 フェンリルが来るので危険だから背中に隠れるように言ったのを、キアラは違う意味で密着するのと思ったのか、恥ずかしくなり照れだした。


 深く考えずにフェンリルに意識を集中した。




「あ、あれはっ!」


「うわぁーーー!」


「助けてくれ!」


「農民タケダ、逃げろ!」


「お前らこそ、俺の後ろに隠れろ」


「無理だ、Fランク農民のタケダに、とても勝てる魔物じゃない、逃げろ!」




 タケダがキアラ姫と会話している間だった。


 ほんの一瞬で、フェンリルは後方の溝から駆け足で現れ、何も知らない冒険者の前に。


 冒険者は突然のフェンリル出現に声は上げるが、半分以上の冒険者はすでに倒され、多量の出血、骨は折れ、内蔵も損傷していた。


 フェンリルの攻撃の速さ、的確さ、爪の破壊力の前に、冒険者は何もできないで、うろたえるしかなかった。




「助けてくれ!」


「タケダ様、フェンリル!」


「俺の背中へ密着してろ」


「密着!」




 フェンリルの実力は予想を超えていて、とてもBランクなのかと思えるレベルであった。


 アイテムボックスからモチを用意、フェンリル戦の準備をしたい。




「アイテムボックス、モチウオール」




 アイテムボックスからモチによる防御壁を即席で作る。


 何もわからず突進してきたフェンリルは急には止まれずに壁に激突し、何が起きたかわからず崩れ落ちる。




「フェンリルが失神してます!」


「危ない、まだ密着してろ」


「密着!」




 失神したフェンリルを倒したとは思っていない。


 キアラ姫は倒したと思ったのとは逆で、ただぶつかっただけのダメージは殆どないとみていていい。


 しかしおっぱいが当たっていて戦いにくいが。


 モチウオールは次の攻撃をするための準備と考えていた。




「鑑定スキル」




 鑑定スキルを使い、フェンリルのスキル、魔法を特定し、どういった攻撃が有効なのか、弱点はどこか、逆に強みはなんなのか、を把握した。


 ある興味深いスキルが確認されて、それはフェンリルが持っているスキル。


 通常は人型の姿をしているのを、戦闘状態の時に、姿を獣の姿に変身させることが可能、変身後は攻撃や防御のステータスが大幅に上昇するタイプのスキルで、フェンリルの長所となるが俺は弱点だと思えた。


 


「失神から復帰しましたタケダ様!」


「ありがとうキアラ。大丈夫だ。アイテムボックス、モチプリズン」




 失神から復帰したのをキアラ姫に伝えられた時に次の行動に移した。


 モチプリズンを決断しており、叩いてある粘着性のあるモチが大量に飛び出していき、フェンリルの周囲を囲い、四角く箱らしき形、床と天井も作られる。


 周りは複数の柱らしき物、まるで猛獣を入れた檻の形が形成された。


 次の瞬間にはフェンリルはモチプリズンで作られた檻の中に閉じ込められていた。




「タケダ様、檻ですか!」


「檻だ。これでフェンリルは出ることは不可能だ」


「檻に閉じ込めるなんて、やり過ぎ!」




 ウォーーーーーー!


 粘着性のあるモチで作られた柱を牙で噛み切ろうとするも、固まったモチには全く傷もつかなく、フェンリルは遠吠えをした。




「す、す、凄えタケダ!」


「マジでFランク農民なのかタケダは!」


「こんな強い農民は初めて見たぞタケダ!」




 タケダのモチプリズンはフェンリルを完全に閉じ込める。


 暴れるフェンリルを見た冒険者達は、信じられない光景、Bランク以上とも思える魔物を楽に捕えてしまい何もさせない。


 全くダメージを負うことなくフェンリルを捕えてしまう凄さに、衝撃を受けていた。




「タケダ様、フェンリルをプリズンに入れたのはいいですが、この後どうするの。ずっとこのまま檻に入れておくのは困ります!」




 地面にエム字開脚したまま話す。




「プリズンにはまだ先がある。変身スキル削除」


「削除?」




 モチプリズンでフェンリルを中に閉じ込めるのに成功した後、最初に鑑定スキルした結果、持っているスキルの獣に変身スキルを削除することにした。


 モチプリズンの中に入った魔物に対してスキルを削除でき、実行するとした。


 モチプリズンには魔物が持つ獣になるスキルを削除可能な特殊な効果があった。


 削除を実行した時、フェンリルは檻で犬型の姿をしていたが、一瞬で人型をした姿に。


 それも男性ではなく美少女、しかも服を着ていない状態、胸は大きく、頭の上には耳があり、尻尾の生えていて俺の前に立っていた。


 まさか女だったとはな。


 俺も予想していなかった。


 


「女の子の姿になった、どうして!」


「フェンリルは元はこの姿なのだが、スキルで獣の変身していたのだ。変身スキルを削除したから、人型に戻ったわけだ。しかし女の子だったとは知らなかった」




 スキル削除をしてみて初めて女の子だと知った。


 しかも裸、驚かされるが、削除は成功しステータスは半減。


 もはや俺にしたら怖い存在ではなくなった。


 獣姿の時は、危険な魔力、爪の鋭さ、破壊力、どれを取ってもAランク魔物であったと判断していい。


 このまま冒険者ギルドに連れていく考えであった。




「信じられない、フェンリルは美少女だった!」


「農民タケダが全てやった、あのフェンリルを捕らえた、凄すぎ!」


「農民タケダ、見たことないコメを使うが、本当にFランクなのかい?」


「俺はFランク農民だ。みんなは怪我は大丈夫かい」




 俺の圧倒的な戦いの勝利。


 フェンリルを無傷で捕らえたことに、冒険者達は熱狂的な目で俺を見たが、俺は普通の対応で答える。


 むしろ冒険者達の怪我の具合を心配する余裕だった。




「大怪我しているのが30人はいる。このままだと死ぬ」


「タケダ様、冒険者を見過ごすのは辛いです。治療をしましょう」


 


 フェンリルの一撃で、爪の鋭さに、30人くらいの冒険者は、出血がひどく、防具である鎧ごと切り裂かれ、兜は壊され、盾も二度と使えないほどボロボロになっていた姿に。


 キアラは酷い惨状に目を隠したい、直視できないとなっていた。


 なぜなら姫であるからクエスト経験は少なく、この様な酷い惨状を見たのは初めてだったのだろうことは容易に見て取れる。

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