第12話 『※11話 フェンリルの報酬 』
『※11話 フェンリルの報酬 』
「おい、ここから出しなさい!」
モチプリズンの中から俺に向かって、出れないことに腹を立て、尚かつ獣姿から戻されたこともあり大声で叫ぶ。
「出さない。そのまま静かにしてろ」
「悔しい!」
フェンリルはステータスが半減以下になったのもあり、プリズンから脱出しようにも不可能だと感じているはずだ。
悔しがる姿は恐ろしい魔物と言うよりも、一般的な町にいる可愛らしい女の子であるが。
「タケダ様は意外と、女の子に厳しい」
「見た目は可愛らしいが、中身は魔王の幹部だ。殺してもいい」
「それはかわいそう!」
「それよりも冒険者の怪我を治す」
「でも……確かタケダ様は魔術士に魔法を封印された、回復魔法は使えません」
「その通りで魔法は全く使えない。回復薬をある分だけ使おう。きっと冒険者なら持っているのもいるだろう」
「集めてみます」
キアラに冒険者が持っている回復薬を集めてもらう。
回復薬は体力の減少を回復するのと、傷を治す効果がある。
回復魔法と同じ効果であるが、俺は魔法は封印されているから、回復薬に頼るしかない。
「これだけ集めたわ。私が治療をしてます」
キアラが集めた回復薬で冒険者の傷を回復していく。
「俺はモチを使い、多少の傷口をふさぐ」
「ええっ! 傷も治せるの?」
「少しの傷だけだな。重症な傷は回復薬で頼む」
「はい!」
「アイテムボックス、モチヒール」
攻撃や防御は出来るモチでも、冒険者を回復させるのは無理だ。
ここまでは今までと同じやり方であり、違うのはモチが冒険者の傷、出血している箇所、粘着性のあるモチは傷口に付き、出血は止まっていく。
「あれ、傷口が治っている」
「俺もだ。少しの傷口は治った!」
「ありがとう農民タケダ、最初はお前をバカにしてしまったが許してくれ……」
「俺は気にしていない」
モチヒールは冒険者の傷口に効果があった。
ヒールの効果を持つモチを使用し傷が回復したのを受けて、最初はバカにしていた冒険者は泣きながら俺に感謝した。
俺は中傷など気にしておらず、冒険者に恨みもなかった。
俺のモチは単なるコメを叩いて粘着にしたモチではなく、勇者が鍛錬したモチなのである。
モチ作りスキルはレベル999の作るモチには特別な傷口効果もあった。
「キアラ、回復薬を助かる」
「ええ、冒険者さん、生きていて良かった。みんな回復薬を飲んで」
冒険者はキアラの協力で次第に回復していった。
「早く出せ!」
「アイテムボックス。モチプリズンを収納」
「ええっ!」
「消えてしまったぞ……農民タケダはアイテムボックスまで使えるのか!」
フェンリルの生きたまま捕らえ、冒険者の傷まで回復し、緊急クエストは俺のひとり無双で終わったっぽい。
ムイト国王都に帰るとし、フェンリルとプリズンの檻は、檻ごとアイテムボックスに収納した。
うるさいのもあった。
周りにいた者は言葉がなく、キアラ姫もあ然としていた。
収納されたフェンリルは、アイテムボックスの中で、出せと、叫んでいたのは誰も知らなかった。
「あっ、そう言えばトニックはまだ崖にいるのかな……」
「忘れていた」
「帰り道で探しましょう」
キアラは崖を降りたトニック達をすっかり忘れて、フェンリルを捕らえ帰る際に思い出した。
俺に至っては忘れてるだけでなくどうでもよくなって、帰りがけに会えたらいい程度であった。
帰り道でと言っていた矢先、崖の付近でトニックを発見した。
「あっ、トニックですタケダ様」
「死んでいる、このまま置いて帰ろう」
フェンリルに瞬殺に近い形でやられたトニックは死んでいないが、倒れて動けずにいた。
俺の声は聞こえていたかな。
「…………おい待てタケダ、俺は生きているぞ」
「生きてます、タケダ様、トニックは生きてますよ!」
「死んでいるのが話すか?」
「生きてますって!」
「フェンリルにやられた。あれに近づくな。早く逃げろ…………」
すでにフェンリルは楽勝でアイテムボックスに入れてあるのを知らないトニックは俺に避難を伝える。
「私達のことは置いて……みんなを王都に……フェンリルの強さは異常、Bランク程度じゃない、超危険Aランク魔物だったわ……」
トニックの近くにいた、うつ伏せで流血しているダイアが言ったのは、せめてひとりでも助けてあげたいというダイアなりの優しさであった。
「心配はない、すでにフェンリルは確保したから逃げる必要はない」
「何だと……意味がわからない!」
確保したの意味がわからないトニックは、頭で考えようとしていた。
すでに大量の流血が草に流れているにもかかわらす。
「フェンリルは俺が倒し、王都に帰るところだ」
「えっ! まさか!」
「タケダ様、トニック達は大変な重症、早く治してあげます。回復薬もまだありすし」
「治してと言うなら、治そう。アイテムボックス。モチヒール」
先ほど、冒険者にしたのと同じ要領で、倒れて瀕死のトニック、ダイア、スマッシュ、とその仲間達10人くらいに、モチヒールを発射し、傷口を治す効果を与えてあげる。
一緒にキアラからも治療を受けたら、傷はかなり癒えたようだった。
「……傷が癒えた。今のは回復薬とモチとかいうので治癒したと……農民タケダ治癒してくれてありがとう」
「礼はいい」
「助かったわ、農民タケダのことを勘違いしていた。フェンリルは倒す、傷は治癒してくれた。それにしても見たことない治癒法。革命的な治癒だわ」
トニックは今までタケダを中傷した張本人なだけに、感謝したいが笑顔では言いにくいがお礼はし、ダイアも申し訳なさそうに言った。
モチを使用した治癒法はまだ存在していない。
俺が世界の最先端の農業技術の持ち主であるのを証明した一件であった。
技術的に優れているだけてなく、攻撃、防御、治癒にも使える柔軟な発想を持つからこそ成せる技と言える。
結局トニック、ダイア、スマッシュは俺に謝罪し、感謝する展開に。
キアラは死者はいないことに笑顔であった。
「当たり前です、タケダ様は元は勇者な……の」
「キアラ」
「あっ、いけない」
「えっ……、勇者とか聞こえたような……」
「ダイア、聞き間違いだ」
元は勇者であるのを、つい言ってしまいそうになったキアラを口止めさせる。
モチヒールと回復薬を終えて、冒険者達は緊急クエストから王都に帰還した。
◇ムイト国 王都
ギルドではフェンリルの討伐を指示した件は国王にも伝えられていたと最初に聞いた。
国をあげての緊急事態に、冒険者の安否を心配していたとか。
ギルドにて受付嬢が冒険者の帰りを待っていた。
「農民タケダ、緊急クエストは無理だったのね。その方がいいわ、いきなりBランク、フェンリルを討伐は無謀です。フェンリルの討伐はトニック達に任せてください」
受付嬢は俺が討伐したのを知らないで話を進めると、後からトニックがギルドに入ってきて。
「トニックさん、さすがレベル25もある凄腕冒険者です。もうフェンリルを討伐したとは、恐れいれました」
「討伐していないんだ」
直ぐに答えた。
「してない……とは、そしたらフェンリルを討伐失敗ですか。大変です。緊急クエストをもう一度発信しないと……」
「いや違う。フェンリルは討伐してある。俺じゃなく農民タケダだ。タケダがフェンリルを討伐し、他の冒険者はみんなタケダに救われて帰った」
トニックは少し恥ずかしいが、ありのままの事実を話し俺を賞賛した。
「農民タケダが討伐したとFランクなのに!」
「証拠はある。アイテムボックス。モチプリズン」
「うわぁっ!」
受付嬢の近く、空いているスペースに、アイテムボックスからモチプリズンをした檻を取り出してみせる。
受付嬢は後ろにのけぞって驚き、しかも檻に美少女がいたのを発見した。
「この……女の子は誰でしょうか?」
「フェンリルだ」
「魔王の幹部フェンリルは、もっと獣っぽいと思うのですが」
「フェンリルの変身スキルを無くした。変身前の姿がこれだ」
「出してくれ!」
フェンリルは受付けにお願いする風に言ったが、フェンリルだと告げられても、とても美少女であるし、可愛らしいし、悪い冗談ではと思い、本人に確認してみようとした。
「あの……フェンリル?」
「フェンリルです。魔王様直属幹部フェンリルとはわたしのことよ」
「ええ〜本物!」
「直属幹部は、魔族でも限られた者にしか与えられない名誉だ。直ぐにここから出しなさい」
フェンリルは魔王から信頼され、常に側近として、可愛がられ、他の魔族からも恐れるられる存在だったと推測する。
しかしなぜムイト国に居たのか。
ムイト国を滅ぼす気だったか。
「これでわかっただろう。緊急クエストは終わりだ」
「タケダ様、報酬を貰いましょう」
「報酬をお願いする」
「はい、報酬ですね……あははは」
受付嬢はトニックから詳しい話を聞かされるていた。
魔王直属魔族と聞いて、Bランクではない、遥かに危険性のある魔物であったと知った。
クエストで出せるレベルのクエストではなかったと反省し、本来なら国家の総力を集め、騎士団を総結集させ向かわせるレベルだった。
もし俺が居なければ、冒険者だけではとても太刀打ち出来なかったはずだ。
このあとは俺はフェンリルの討伐分報酬をいただいた。
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