第2話 『1話 キアラ姫との出会い』

『1話 キアラ姫との出会い』


◇ハクサン国の辺境地




 今の俺は、地下牢から出て暮らしていた。


 勇者アマルフィこと俺はハクサン国の田舎の家で暮らしていて、特別に何も苦労もせず、食料品などは自給自足であった。


 ドナウ国王から裏切られ、地下牢にいた年数は10年。


 果てしなく長い年月に感じた毎日だったが、ある日に、地下牢へ近づく者が来て、地下牢の鍵を地下牢の中に投げてきた。


 俺は、最初は理由はわからなかったが、先ずは出たい気持ちだった。


 偶然にも監視の兵士はいなくて、俺は鍵を使い、地下牢から外に出た。


 地下牢から出た時には誰にも見つからずに済んでいて、何食わぬ顔をして王都を歩いた。


 久しぶりの太陽だった。


 そして王都から離れた辺境の田舎へとたどり着くと食べたい時に食べて、寝たい時に寝る生活をし、主に農民生活を開始した。


 姿は伝説級のカブト、鎧、盾、剣を装備していた冒険者時代とは違い、農作業に適した服を着ていた。


 簡単に言うと農民になっていた。


 冒険者時代は農民について言えば、興味なかった。


 農民はあらゆる職種で最も人気がないのは事実だった。


 誰も成りたがらない職種。


 子供達の間でも、人気はやはり冒険者であり、商人になりたいのもある。


 魔法や剣術で魔物を倒したいと思うのは普通だろう。


 勇者を捨てて、全く別の人生を歩んでいたのだ。


 勇者時代は二十才だった。


 地下牢にいたのが十年。


 現在は三十才になっていた。


 農作業をする際に、必要がないと判断したからで、額には汗をかき、土で両手は汚れていた。


 


「今日もコメを作る」




 誰かに話したわけでなく、誰もいない田舎でひとり言を言ったのであるが、俺は特に気にしない。


 家の周囲は、広大な田畑が広がり、俺が耕した畑にはコメが一面に実っており、綺麗な稲穂風景であった。


 ちなみに俺の名は、勇者時代の名で、国王から隠れるために別名としてタケダと新たに決め、タケダは剣術と魔法を封印されたが魔力はそのままあるため魔力を使い、何か出来ないか考えて暮らしていた。








◇タケダの家の付近(三人称)




 タケダの田舎の家の近くを通る馬車。


 道は一本道で周りには森しかない道であり、馬車は何事もなく走っていた。


 馬車に乗っていたのはその国、ハクサン国の姫、キアラ姫で、真っ直ぐ前を見ているが、顔は暗い表情であったのは、これから馬車が進むのは、隣の国である、ムイト国が目的地となっており、理由があって進んでいた。


 キアラ姫はムイト国の王子と結婚する為にひとりで向かっていて、つまりはムイト国の王女になる予定、キアラ姫が乗る馬車が進む中、急停止されキアラ姫は馬車内で危なく大怪我しそうになる。


 いったい何事なのかと馬車の行商人へ、




「……何事なの……」




 行商人は乗せているのが自国の姫であるから、最大限の気づかいをしていたのだが、




「……すみませんキアラ姫……前方に……」


「前方に?」


「オーク……オークが一匹います。道を塞いでます!」




 行商人の声はキアラ姫には震えている風に聞こえたのだが、実際に行商人は恐怖で凍りついており、手綱は離していて、馬は恐怖で見動き出来ずにいたのだった。


 


「逃げましょう!」




 キアラ姫は魔物、それも評判の悪い方で有名な魔物オークの出現に怯えながらも逃げるよう指示をしたら、行商人はキアラ姫の指示は聞こえてはいたが、体が動きだせずにいて、




「…………ダメだ、殺される!」




 行商人が言ったと同時にオークの足が馬車に降ろされていき、馬車の半分は潰されてしまった。




「きゃあーーーー!」


「うゎあーーーー!」




 馬車の半分が潰されてしまい行商人は助かったが怪我を負い、キアラ姫を置いたまま逃げたのは、あまりの恐怖に取った行動であった。


 残されたキアラ姫は馬車から降りて逃げるが、足は震えていて、立つこともままならないし、走ると言うよりも転んでいると言った方が正確、転びながら逃げるキアラ姫はオークが間近まで接近しているのに気づいて、逃げる余裕もなくなる。














◇タケダの家




 叫び声が俺の耳に届いており、声のする方向に視線を送ると、




「オークか……それに人族もいる」




 元勇者である俺は一般の冒険者の何十倍もの聴力と視力を備えており、声のする位置まで正確に判断していて、考える前に走り出していた。


 ちなみに俺のレベルは勇者レベル999であったが剣術スキルと魔法を使えないのは変わらないままだ。


 しかし、あらゆる能力ステータスがマックス値。


 伝説の勇者と言われて、現在のステータスは、






職種 農民レベル999


体力  9999


魔力  9999


防御力 9999


素早さ 9999




スキル


鑑定


コメ作りレベル999




 となっている。


 以前は勇者レベル999となっていたのに、現在は職種を農民とした。


 農民に代えてもレベルは999とマックス値まで上げてある。


 










 俺は女の声を聞いたのは、農作業をしていた時だった。


 かすかに耳に届いた悲鳴と聞こえたが、遠いため現場に行かないとはっきりとはわからなかった。


 なぜならここはハクサン国内でも田舎の中の田舎である。


 女が一人で歩く森ではないし、居るわけもないからだ。


 実際に俺がこの田舎に住んでからは誰にも人には会っていない。


 魔物には毎日出会っているが。


 このまま放置するのも嫌なので現地に行くとした。


 行くなら早い方が良い。


 危険がある可能性が高い。


 農作業を止めて農具を置いて走った。


 悲鳴に聞こえた声のした方角の辺りに到着。


 そこで目に入ったのはオーク。


 高貴な服を着た女を踏み潰す寸前であった。


 その女は絶望で涙が溢れていて、叫び声は森に響く声であった。


 尻もちをついていて、両足をエム字に開脚しており、スカートの中身が丸見えと高貴らしからぬ格好である。


 危なかったな。


 あと少し遅かったらオークに踏み潰されていた。


 俺は座り込んでエム字開脚した㊛を抱きかかえるとオークの足をかいくぐり、助け出すのに成功した。


 女は何が起きたのかをわからなく、周囲を振り返る。




「危なくオークの足の下敷きだったな」


「ありがとう! 今の凄かった! あなたは?」


「俺はアマル……いや……タケダだ。近くに住んでいる。ここら辺は危険な魔物が出現するので㊛が歩くには危ない」




 俺に抱きかかえられ素直にお礼を言い、オークの足から逃れたのだと知る。


 


「私のおっぱいを触ってます!」


「命の方が大事だろう」




 俺が抱えた手はどうやら女のおっぱいに触れていたらしい。


 しかし今はそれどころではない。




「オークから逃げましょう。勝ち目はありません。絶対に!」




 この人は天才的な運動能力かスキル持ちだと直感したが、オークには敵わないとも思ったか。




「逃げる? 逃げる必要がない」


「オークと戦うと言うの?」


「そのつまりだが」


「ひとりで勝てる魔物でないのは私だって知ってます。高レベル冒険者ですら死ぬ魔物です!」




 俺の言う意味がわからない女は必死に説得して、オークから逃げたかった。


 俺は全く逃げる気はなく、それどころかオークの方に足を向けるのであり、戦う気でいるから混乱していた。




「ここから動くな。俺が倒す」


「待ちなさい、死にますよ!」




 女を絶対に動くなと言って自分はオークに近づくとアイテムボックスを使用。


 アイテムボックスは俺の持つスキルで、アイテムや武器などを収納可能となり、いつでも取り出せ、便利なスキルとなるが、使えるのは僅かな者に限られ、高レベルの者にしか使用できないスキル。


 低レベル者は袋などに入れて持ち運ぶと決まっている。


 俺が簡単にアイテムボックスから使用するアイテムを取り出すが、現れたの、白く四角い物、タケダの手のひらに乗る程度、どうやってオークと戦うのか理解できない様子だった。


 


「アイテムボックス、モチブラスト」




 俺がアイテムボックスから取り出したのは、家の近くで耕したコメから作ったモチである。


 農地で自作した農作物であり、オークと戦う武器でもある。


 この時点で㊛にはまだ何物なのか予想もつかないだろう。


 俺の手から高速に近い速さ、瞬きしたくらいの速さだ。


 モチとは日本で言う米から作られる餅に似た食べ物と考えてよく、もちろん俺は日本人なのでコメは主食であった。


 日本食も食べた経験から元勇者の天才的な能力を活かし、農作業を極限まで極めてしまい、コメから究極のモチを作ったのだった。


 究極のコメは武器になるのを俺は農民レベルをマックス値まで上げたことで会得していた。


 それは魔法と剣術を封印され、生き残る術をてにしたかったのもある。


 


 ズドーーーーーン!


 俺の横で怯える㊛が瞬きした瞬間にモチブラストがオークの胸に命中した音が耳に届くと、まるで爆発事故のようなごう音であって、その後オークは後方に倒れてしまった。




「もう逃げる心配はない。オークは死んだ」




 一撃で死んでいたのは確認した。




「あ、あ、あ、あなた、誰なの、そしてその白く四角い物は……なんなのか説明してください! 強すぎて意味わかりません!」




 オークが倒れているので逃げる心配はないのはわかるが、倒した方法が説明なしには理解できないでいたらしい。


 またも驚いたからか、地面に座りこんでしまい、大胆にもエム字開脚している。


 これを注意した方がいいのか迷う。


 しかも俺は倒して当然と言う顔をしていたから余計に混乱するに決まっており、余裕を通り越してただの一撃で倒したわけであった。


 女の知る情報ではあり得ない風景であったのは納得する。




「簡単に説明すると、コメから作ったモチだ。モチは食べ物だが、究極的に固めたら武器になった。コメを応用して武器化し高速で発射しオークに的中させ死なせた」




 俺はコメを畑で作る際に、農民レベルが999、コメ作りレベルも999という神レベルまで達してしまい、作ったコメをあり得ないレベルの攻撃力を持つに至った。


 しかしこの簡単な説明で理解できる㊛ではなく、いや誰も理解できないであろうか。


 


「意味が全くわかりません! しかしオークを倒してくださりお礼を言います。私はこの国、ハクサン国の姫でキアラと言います。あなたは?」


「俺はアマルフィ……違う……訂正するタケダだ」


「アマルフィ!」




 女の名前はキアラと言うようだった。


 しかも姫とは驚きである。


 言われてみると高貴な服を着ているから、納得はした。


 名前を間違えて本名であるアマルフィと言い、すぐに訂正した。


 キアラは俺の名を知っていたので、不思議に思うのは当然だろう。


 俺が魔王ハデスを倒し、国王の間に来た時には幼かったはずだ。




「もしかして……あの伝説の勇者であるアマルフィ様ですか?」


「違う。タケダだ」


「でも確かにアマルフィと聞こえました! はっきり聞きましたよ!」




 俺は実際にアマルフィと言ったのは確かでキアラが正しいので、嘘をつき通そうとしたが、あまりにも不自然なので、もはや嘘は突き通せないと覚悟した。




「正直に話す……元はアマルフィ、勇者だった。しかし今は田舎の家で暮らすタケダだ」


「やっぱりアマルフィ! あの勇者様!」




 勇者のアマルフィと聞いて目を大きく開けて叫んだキアラ。


 アマルフィの名前に驚いたからか、またもエム字開脚になった。


 この女は驚く度にエム字開脚するらしい。


 俺の予想を超えた驚きであるが、家で休憩を取ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る