第3話 『※2話 国王の正体』

『※2話 国王の正体』



◇タケダの家




 ハクサン国の辺境の地で偶然に出会ったキアラは広大な土地にある俺の家にいた。


 テーブルにつくと、俺は森で出したモチの残りを再びアイテムボックスに収納した。


 


「なぜあの伝説の勇者アマルフィ様が、こんな辺境の田舎の家で暮らしていたの」




 あまりにも謎が多くて何から訊いたらいいのか、わからないキアラは、まずは一番の疑問から訊いたようだ。




「俺は勇者アマルフィとして魔王を倒した」


「魔王を倒した話は誰でも知ってます」




 あまりにも有名な話で、知らない方が変に思われるくらいにメジャーな話であった。




「ドナウ国王から賞賛されたのはいいが、賞賛された後に俺の予想外の展開となった」


「ドナウは私の父親です」


「そうだな、キアラの父親のドナウ国王は、魔王を俺に倒させておいて、倒したらもう用済みとしたのだ。つまりは魔王が居なくなったら俺は邪魔者てわけだ。邪魔者は居ては困るとなり、地下牢に閉じ込めたのだ。俺は裏切られたわけだが、地下牢に10年いたのち、誰かが鍵をくれて脱出可能に。地下牢から出たわけだが、生きにくくなり、王都から離れた田舎の家で農作業をして暮らすことにした。ここなら誰にも知られることはないからだ。しかしその時に剣術スキルと魔法は封印されたままだがな」




 俺は名前は元はアマルフィであって、アマルフィの名で魔王を討伐し、有名な勇者として伝説となるが、欲望深いドナウ国王によって国民に知られることなく処罰、このことを知っている者はドナウ国王と側近の者しかいないし、国民は勇者アマルフィは旅に出たと伝えられるが、その情報はドナウ国王側から流した偽情報であったと後々に知った。


 ちなみにキアラはこの事実を知らなかったから、ショックを隠しきれない様子になり、父親の犯した罪に胸が痛くなったのか、悲しい顔になった。




「まさか父が……そんな横暴をしていたなんて……ごめんなさい」


 


 キアラが悪いわけではないが、謝らずにいられなくなり謝罪したら俺は、




「キアラが謝ることはない。それに俺はこの田舎の家で農作業して暮らすのを気に入っている。魔物はいるが平穏だし、ひとりで暮らすにはいい土地だ。王都は人が多くてうるさい。ここは静かに暮らせる」




 俺にはオーク程度はたいした強い魔物ではないから、静かで暮らしやすいと思っているが、キアラにはオークが出現する近くの家が、どう考えても静かで暮らしやすいとは思えないでいたようだ。


 あまりの考えの差の違いに衝撃を覚えている風に思えた。


 


「オークが出現するの、どこが静かで暮らしやすいの!」


「俺にはオークは弱小魔物。それよりも気になったのはキアラの方だ」


「私のこと?」


「なぜハクサン国の姫であるキアラが護衛も付けずに馬車で移動していたのかだ。常識的に考えて変だろう。王都から距離はあるし、魔物が出現する地点を通すとは考えにくい。何か理由があるのだろう」




 俺は疑問に思っていたのはキアラが護衛の居なかった件であり、普通は何人もの護衛である騎士団がつくのであって、不自然に感じたのだった。


 事実、キアラ以外に何年も誰一人として家の付近を通り過ぎた者はおらず、人を見たのが久しぶりであったからである。




「……実は私は隣の国、ムイト国の王子と結婚する予定なのです」


「ムイト国か……確かにムイト国に行くならここの付近を通ると近道だ。だが余計に変だ。結婚するならもっと大事に扱うだろう。騎士団もいないで隣の国に送るとは自殺行為に近い」


「…………それは」




 ムイト国の王子と結婚する話は事実であってキアラ姫は嫁ぐ形となるのだが、危険な道で向かわせているのは俺には変であった。


 さらに疑問が深くなる一方、キアラは話にくそうにしたが話すことにしたのは、俺を信用したからなのか。




「……私には姉がいます。シオンといいますが、彼女は私を嫌っている。私が姉の座を奪い王女になると思い込んだらしいのです。私は姉のシオンの座を奪い取る気は全くないの。しかしシオンは私を怪しみ隣のムイト国に勝手に王子と結婚するのを決めてしまったのです。馬車で護衛の騎士団がいないのはシオンが決めたのでしょう。途中で死んでもいい、むしろ死んだら嬉しがるかもしれません」


「とんだ姉を持ったものだ。俺は気持ちはわからないが、飛ばされたのはある意味似ている」


「ふふッ」




 キアラ姫は思わず笑ってしまったのは、かなり暗い姉妹の争い話なのに、俺も国王から裏切られ辺境の地に行ったわけで、似ている者なのかと思ったからだろう。


 お互いに憎まれ者同士。


 キアラは俺に助けられて良かったなと感じ始めていたなら俺も嬉しかった。


 


「助けてくれてありがとう。私は結婚は決まっている。国と国との約束です。ムイト国まで行くことになります」


「馬車が無いのにか?」


「あっ……オークに破壊されたんだっけ、忘れてた」




 俺に言われて思い出し、馬車はオークに破壊されて、もはやまともに走れる状態ではない。


 かといって他に移動するとしたら徒歩だが、徒歩で行くにはまだムイト国までの距離はあり過ぎて、馬車でないとたどり着ける距離じゃない。


 キアラもやっと気づいた。




「ムイト国までは徒歩で行くのは無理だな。増してオークも出る」


「またオーク! 嫌ですオークは会いたくない。どうしたら……」




 本当に悩んでしまうキアラはオークに殺された方が良かったかと感じるほどなやんでいた。


 どうやってムイト国まで行くかと途方に暮れている顔に。




「簡単だ。俺がムイト国まで行ける」




 あっさりと俺は言った。




「本当に!」


「でも今日は俺の家で休んだら良い。明日にでも出発しよう」


「はい」




 慌てることはないからキアラには俺の家に休んでいき、明日にでも出発と話あった。




「勇者様の家にしては質素な感じ」


「農民をするには十分な家さ。農作業をして食べていければいいのだからな」


「なるほど」




 キアラが結婚式を嫌なら俺が止める方法はある。


 コメの収穫は余裕があるので、ムイト国に一緒に行ってあげても良いだろう、条件付きで。




「明日に俺も一緒に行くとしよう。特別に予定はないから」


「ありがとうございます」


「ただし条件がある」


「えっ、条件?」


「条件は難しいわけではないから心配はなくて、コメからモチを作る作業の手伝いだ。俺もするから同じように作業して欲しい」




 ムイト国まで送る手間を考えたら、この程度の手伝いはしてもらいたい。




「手伝いなら構いませんよ。それに面白そうだし。経験はないけど」


「決まりだ。手伝いの準備をする」




 キアラにもモチ作りをしてもらうため、いつも俺がしている準備をした。


 コメはたくさんあるので、コメを炊いた後に、叩いたり、水を含ませたりして、柔らかなモチにする作業だ。


 一通りの説明はしたら、キアラは理解してくれる。




「わかりました。普通に食べるコメをさらに柔らかくモチモチにしていくのね」


「そうだな。俺もやるから同じ真似してごらん」




 先に俺がお手本となるモチを作った。


 まあ俺の場合はモチ作りスキルがレベル999まである。


 全く同じにはならないが、覚えてくれたらいい。


 俺が叩いたりして柔らかく粘着性のあるモチにしていくのを見てキアラは興味深そうになる。




「凄い、コメがモチモチしたていく。伸びたり縮んだり!」


「これが俺のモチの秘密さ」


「私も作ってみよう」




 キアラもコメを取り、俺と同じ叩いたりしてモチモチにしていく。


 ここまでは良かった。


 段々とモチモチしていくのが俺にもわかる。


 しかしキアラはモチの作り方にまだ慣れるとは言い難かった。




「勇者様……ちょっとモチがモチモチしてきて体に粘着してきます。体についてきちゃう!」


「やはりな。そのベトベトになるのは俺も経験済みだ。最初は誰でもベトベトになるのさ」




 モチがモチモチしていくと、伸びたり、縮んでいき、ベトベトになるもの。


 これが大事なので問題はないのだが、体にまとわりつくのが難点と言える。


 キアラの体にはすでにモチがべっとりと付いている。


 髪の毛から体にもだった。




「ヤバイです勇者様。助けてください!」


「服に付いてるから、服を脱ぐのがいい」


「はい……ええっ! 服を脱ぐのですか!」


「服がベトベトだぞ」


「そうですね……じゃあ脱ぎます」




 服を脱いでみたが、多少は良くなったか。


 だが結局は体にモチが絡みつき、ベトベトになる。


 おっぱいから腰もベトベトだった。




「助けて! もうダメです! モチの作るのはとても大変でした。簡単じゃない!」


「そうだろ、モチを作るのは大変な作業なのだ。だけど慣れてくると面白みがわかる。経験を積んでいけば、キアラも面白みがわかる」


「面白みよりも、助けて!」




 結局のところキアラの体は下着姿だあるが、モチが体中にまとわりつき、最後は下着も取る。


 大苦戦していた。


 それからモチ作りは終えて、宿泊するとした。


 ベッドに行き、俺が寝る横にキアラも来た。


 俺とキアラは密着したまま寝る。




「先ほどの作業は大変でした。ずっと姫として生きてきて、農民の方の苦労を知らなかったのを思い知った」


「そうか、農民の苦労をわかってくれたなら俺は嬉しい」




 キアラは俺の真横にいて、おっぱいが当たっていた。


 








 


■家の前




 翌朝になり、ベッドでキアラと抱き合っていた。


 キアラはモチ作りに疲れたのか、すやすやと寝ていた。


 出発の時間になり外に出てもらう。




「伝説の勇者様が送ってくれるなら助かります。お願いします、ムイト国まで送ってください」


「送ろう。昨日はモチを手伝いしてくれたからな」


「とても手伝いとは言えません!」




 送ってくれる俺にありがとうとお礼を言う。


 俺は家から外に出るよう指示し、そのとおりに家の外に出た。




「アイテムボックス、モチジェット」


「えっ、また出した! しかも何だかわからないし!」




 魔物も居ないのに再びあの白く四角いモチをアイテムボックスから取り出したので、驚いたらしい。


 今度はエム字開脚しなかったので、安心した。


 俺は何も不思議がることなく冷静であった。


 田舎暮らしを初めてから俺は、農作業の習得に時間を費やして、剣術が使えないから剣も必要がないし、広大な土地で農作業をしコメを作る日々であった。


 そんなコメを収穫しているなか、ある日にコメからモチを作るのに成功をして、魔力の豊富な俺は何十、何百時間もコメからモチを作る結果、農作業レベルが神のレベルまで到達していた。


 俺はそれは知らずにいてある時に、モチが強力な武器になったと知った。


 コメは、この世界では一般的な食品、町に住む人にとって食品でしかなく、食品以上でも以下でもなく、単なる食べ物としか考えられていない。


 そこで俺はコメをモチとして開発し、常識を超えた存在にまで発展させたのであったが、キアラはモチが何なのかまだわかっていない。


 俺の成果はとてつもない進化であって、知らずに農作業技術を何千年も進化させていて、俺がいなかったら、おそらくはこのレベルの農作業技術を得るには千年以上はかかったであろう。


 俺は勇者として戦い、魔王ハデス、ドラゴン、冒険者が恐れる魔獣、魔人ですら、倒したわけであるが、農作業にも適正があったようだ。


 単なる趣味程度にしか考えていない、時間潰し、楽しい趣味、老いたとはいえ、年齢は30代、老後にしては早いが、ゆったりとした時間を過ごすした。


 俺が生み出したモチを何十個も連結し形にした、形の外観は日本で言うと、自動車のような形、乗るところもあるが、全てはモチで作られていた。


 俺はモチジェットとそれを名づけていて、ムイト国に行けると言ったが、キアラにはコメとは食べる物、食卓に出るあのコメにしかわからないだろう。


 当たり前だがコメで馬車の代わりになるとは誰も考えつかないし、発想する者などいなく、理解できないでいる。




「コメて……食べる物ですよね。私を馬鹿にしてますね?」


「コメは食べ物だ。けども俺は食べ物のコメを進化させてモチにした。神のレベルのモチにな」 


「あの〜、モチは魔物と戦う時に使う武器ですよね……どう見ても乗り物っぽいですよ」


「モチジェットは飛べる」


「ええっ!」

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