第14話 初めての経験


 ここまでのあらすじ!


 幼馴染を寝取られた俺が全校生徒に嫌われたら、ド変態な転校生に隷属させることを条件に噂を払拭!

 無事ざまぁされた二人だったが、明日実の奴隷発言で俺は周囲に大魔王と呼ばれて⁉


 明日実が作ったド変態部屋にて、明日実を説得しようと思ったら何故か愛し合う流れになって……。

 ド変態金髪碧眼美少女転校生、明日実明日香とのイチャイチャ性奴隷ライフは免れない⁉


 次回、九重、死す! ド変態スタンバイッ!




 ……さて。


「ではまずは手を繋ぐところから始めてみませんか?」


「うぇえ?」


 俺と明日実は例のド変態部屋にて、よくA〇なんかで見る膨らませるタイプのベッドに腰を掛け、並んで座っていた。

 

「やはり最初は手を繋ぐことから始まると思うんです。それから徐々に、レベルを上げていきましょう!」


「まぁ、言ってることは間違ってないんだけどさ」


 間違っていない。

 確かに俺は、順序を考えてと明日実に言った。

 だが、決してそれを実行するとは言っていない。


「じゃあいいじゃないですか。というか私としては早く最後まで行きたいんです。オブラートに包むとS〇Xしたいんです!」


「一体何を包んだんだ……」


 呆れてため息をつく俺。


「ま、まぁ? これがそういう焦らしプレイと言いますか、S〇Xしたときの達成感や快楽を高めるうえでの行動と解釈するならば、さすが九重さんと私は思いますけど」


「焦らしプレイ好きだなほんと」


「えへへ、そんなことは……♡」


 頬に両手を当てて、くねくねと体をよじらせる明日実。

 明日実の守備範囲が広すぎるが故に、すべてをプレイとして受け流されている。

 正直、俺の打つ手がない。


「で、では九重さん。手を繋ぎましょう?」


「う、うーん……」


 どうしたものかと頭を悩ませる。

 別に手を繋ぐくらいだったらいいのだが……いや、女子と手を繋いだことのない俺にとっては大事ではあるのだが、今までの明日実の欲求に比べれば造作もないこと。


 だが手を繋いでしまえば調教が始まってしまうような気がして……というか、もはやその流れから脱出することができないような……。

 なんて頭を悩ませていると、


「えいっ!」


 明日実がじりじりと距離を詰め、手を重ねてきた。


「うはっ!!」

 

 そのまま俺の手を握り、軽く体温を分け合う。


「あはは、なんだかドキドキしちゃいますね……」


 明日実が顔に垂れかかった前髪を耳の後ろに流しながら呟く。

 頬をほんのり紅潮させていて、意外に初心な反応だった。


「(か、可愛いな……って、いやいやこいつはド変態! 何普通の女の子として見てんだ俺は!)」


 顔を横に振り、雑念を振り払う。

 しかし、どこまでも童貞な俺は無意識に触れ合う手の部分に全神経を集中させてしまっていて、胸の鼓動は無視できないほどに早くなっていた。


「(明日実の手、結構すべすべしてんだな……めちゃくちゃ細いし、柔らかい。近づいたからかいい匂いがするし、明日実の反応がやけに初心だし……)」


 明日実が照れくさそうに俯く。


「あ、あれですね。私もこういう経験は全くないので、結構ドキドキしますね。手を繋いだだけで、こんなに胸が熱くなるものなんですね……」


「ま、まぁな」


 空き教室に二人だけ。

 まるで初めて手を繋いだカップルのように、顔を見合わせず斜め下を見る。


「ど、どうですか? これで私のことを好きになったりは……」


「いやいや、わかんないだろそんなの! ってかそもそも、明日実は俺のこと好きじゃないだろ」


「うーん、好きの定義にはよりますけど、性的興奮を覚えるっていう意味ではかなり好きかと……うへへ♡」


「嫌な告白の仕方だな⁉」


 性的興奮を覚えるので好きです、とか青春ドラマで絶対に言わない告白のセリフだ。

 

「(ってか、好きってなんなんだろうな)」


 世の中もっと割り切って、軽い気持ちで付き合ったり、そういう行為をしたりするけど俺にはよく分からない。

 付き合うなら好き同士だと思うし、そういう行為をするなら好き同士であるべきだと思うのだ。


 だから明日実に好き同士じゃないと……的なことを言ったのだが、恐らくお互いに誰かに恋をした経験はない。

 そんな俺たちがこんな奇妙な入り方で、一体何をしているんだろう。


 考えれば考えるほど結論は奥深くに沈んでいってしまうような気がして、俺は考えるのをやめた。

 すると明日実が、ピクリと手を動かし、今度は俺の指の隙間に指を入れてくる。

 


「これが恋人繋ぎ、というやつですよね……?」



 そのまま俺の手を握り、より親密に手を繋ぐ。


「ら、らしいな」


「ふふふっ、なるほど。やはり異性とのスキンシップはいいものですね。手を繋いだだけでここまで満たされるなんて」


 幸せそうに目を細めながら明日実が呟く。

 なんともドキリとする所作に、俺は思わず目をそらした。


「この感じなら、きっと私たちが好き合って、最後までしたらさぞ幸福に胸を満たされるんでしょうね」


 春の陽気のように、穏やかに微笑む明日実。

 いつもと違う雰囲気に、俺は思わず目を奪われていた。

 

「(俺はもしかしたら、こんな明日実に本当に絆されていくのかもしれない。今はどこか、そんな気が――)」




「ならきっと、野外S〇Xや監禁プレイ、目隠し手縛りプレイなんかも最高ですねっ♡」




「雰囲気が台無しだッ!!!!」




 ――今日の成果。



 初めて恋人を繋ぎをした。


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