この村のこと 村長のこと


「そ、村長…?どうしたんですか?」


「ゴメ…ン…ネ…」


村長は6つの目から涙を流し、布団を濡らしていた。これは多分アラクネってやつですか?初めて見たね。なかなかいいじゃないか。


「…体調悪いんですか?」


「君、動じないんだね」


ケネスは俺を馬鹿と思っているような目をしていた。誰が馬鹿だ。俺は優秀だぞ!多分だがな!


「村長、話してあげてくださいよ。この村のこととお金のこともね」


「ワカッタ…アルスチャン…ビックリシナイデネ」


そういうと村長は布団をはだけさせる。そこには腹の部分は人間だが、それ以外が全て蜘蛛の糸で巻き付けられていた。だが、手と足先は蜘蛛の足のように尖っている。他は人間と変わりがない。

胸はあるにはあるがその全てが蜘蛛の糸で縛られており、かなり窮屈そうに見える。

頭と手と足先は蜘蛛、それ以外は人間だが蜘蛛の糸で巻き付けられているという不思議な見た目だった。


「…アラクネ…じゃない?」


「アラクネなんて言葉よく知ってたね。誰から教えてもらったのかな?」


「い、いやぁ…勉強をしただけだよ。あは、あははは」


ケネスは嘘だねという顔をすると、村長と話し始めた。一先ず話を聞いてもらえってことか。


「村長、まずはお金だね。お金はどこにあるの?」


「アソコ…二…」


尊重が指を指した方を見るとお金の入った袋があった。俺は確認してみると1度も開けていないようで、紐できつく縛られていた。


「…その姿を見られたくなったってこと?」


村長は首を振ると、自分の指で頬をなぞる。すると、なぞったところから血が流れ始めた。傷をつけたくなかったか?


「あの指はね、かなり鋭いんだ。私も触れるか触れないか程度だったんだけど、血が出たんだよ。その上、痛みもなくてね。そんな状況でお金なんて渡せないよね。そして、それを知ってるのは私だけ」


「なるほど。もしかしたら、切り落とされてたかもしれないって事ですもんね。そりゃ金は使ったってことを言っちゃいますね」


「そうなるね。それとこの村に関して…多分だけど君とノエルちゃんは知らないと思うよ。それ以外は全員が知ってるさ。私もこの村出身だからさ。村長、教えてあげて」


村長は頷くと口から蜘蛛の糸の塊を何個か吐き出した。その塊を何やらこね始めると俺達が座れる椅子が完成した。少しばっちい気がするが、仕方ない。俺は村長が作ってくれた椅子に座ってみると意外としっかりしていた。


「村長、話をしてくれないか?この村のことについて」


「ワカッタ…セツメイスルネ」


村長は俺が住んでいる村のことについて話し始めた。村長は途切れ途切れだったため、要約する。


ここは元々悪魔の森と言われ、厄介払いされたもの達をこの森に捨てるという場所だった。そんな中、人間たちは協力し合い、村を形成し始めた。

そんな中、ある異形種と呼ばれるものたちがこの森を捨てられる。村を見つけた異形種たちは助けを求めた。それを見た村のもの達は異形のものを怖がってはいたが、誰が来てもいいように村では住処を用意していお。


異形種というのは人間では無い力を持ち、虫や獣といった別の生き物の血が流れている生き物だった。人間たちも異形種たちも最初は同じように怖がっていたが、時が経つにつれて交流をするようになった。

そんなある日、1人の異形種が人間との婚約を結ぶ。子供は生まれ、とても充実していたのだった。


だが、その幸せは続くことは無かった。

子供が異形種の力を暴走させてしまったからだ。

半人半異の子供は本来の異形種に比べ、力が強く能力も高いことが判明した。それを恐れた村人たちは異形種達に黙って巨木の近くに捨てた。


ある3人の異形種はその状況を見かねたのか、巨木の近くを開拓し、子供たちのお世話をする。

それから百数年が経過した今、村としての生活をできているということだった。


「つまるところ、俺たちはその先祖たちは凄かったってことでいいか?」


「ざっくりまとめるとそうだね。力があるからこそ捨てられたって感じだね」


「ソレデ…イイヨ…」


ケネスは先祖たちは馬鹿だよねという表情をし、村長は下を向いていた。五歳に聞かせる話では無いな。それよりもだ。


「村長、この村に男が少ないのはなんで?今のところ、俺だけじゃん」


「ソレハ…オンナノコバッカウマレルカラ…」


「実は半人半異の子供は女の子だけしか産まれないんだよね。私のところも5人とも女の子だったからね。でも、何故か君だけは男の子だったんだよ。村の人達からは大事にされてるのはそれが理由。ただ1人、自分だけのものにしようとしているのもいるけどね」


「ノエルのことか…でも、なんで俺を狙うのか知らないんだよな」


商人は頷くとポケットから小瓶を取り出し、机の上へと置く。これは木の破片と葉っぱ?


「これは真実の葉っぱと言ってね。煎じて飲ませれば彼女の気持ちは分かるわ。それと自分の力ってどれくらい把握してる?」


「…多分、植物系だとは思うんだけどちゃんとは知らないんだよ」


「…アルスチャンハ…ソノチカラデドウシタイ?」


村長は俺にそう聞いてくる。それはもちろん一つだけだ。

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男女比のおかしい村に転生した俺、のんびり過ごします チキンズチキン @tikinzu

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