村長のやらかし


俺は嫌な予感を感じ取りノエルから逃げようとしたところ、お母さんに捕まり、抱きかかえられる。

何とか逃げようとしていたが、

『このままじゃあなたの大好物のワビサを食べることになるんだけど…食べたい?』

と言われてしまい、強制的に家に帰ることになってしまった。ちなみにワビサは前世で言うとあのワサビだ。お刺身とか食べる時に使うあれだが、辛さがとんでもない。

知らずに食べた時は神に祈りを捧げ、もうやめてくださいと言い続けていた。今思えば、二日酔いの時と同じことしてたんだな。

それ以降、俺にはトラウマとなっている。


「でも、村でやることないじゃん?」


「それがね。何かやりたいことがあるって村長が言ってるのよ」


「へぇ〜ノエルは知ってた?」


「知らなかったよ!」


村の人たちに言わず、村長の独断で決めたってことか。なるほどな。


「「何か嫌な予感…あっ」」


くそっ!ノエルと被っちまった。おい、ニヤニヤするな。俺が先に言ったんだよ!お前後〜!…ってやった思い出あるわ。小学生の時と変わんねぇや。


「あらっ仲良しね」


「仲良くは…」


俺は否定しようとしたところ、ノエルは涙を溜めていた。くっ…やめろ!お母さんに怒られる!


「うぅ…」


「はい、仲良しです。はい、とてもです。はい、恐らく、多分、最もです」


「女の涙には弱いのね。アルスは」


お母さんはからかってるかのような含み笑いをする。女の涙には逆らっちゃダメよと言ったのはあんたでしょうが…。素直な俺を褒めなさい。

ノエルは俺の発言を聞いてか嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねている。


「アルスと両思い〜♪」


「片思いの間違い…」


「うぅ…」


「はい、両思いです。はい、多分です。はい」


「良かったわね。ノエルちゃん。二度とアルスは逆らえなくなったわよ」


お母さんはニヤリと悪い笑みを浮かべるとノエルも同じような笑みを浮かべる。俺の立場が無くなっちまったじゃねぇかよぉ!どおしてだよぉぉ!!

ノエルは嘘泣きを覚え、村に行く間、俺の否定的な発言に嘘泣きで対応してきた。

適応だけはすごいんだこの子は。


村に着くと村長の家に村の人達は集まり、怒りの表情で扉を叩いていた。


「おい!出てこい!殴られないだろうが!」

「ぶっ殺してやるからな!」

「貴様の首をちょんぎってやるわ!」

「村長辞めやがれクソッタレが!」

「はよ、出てこんかい!んの分かっとんのじゃ!居留守なんざ無駄じゃボケ!」


最後のやつ、借金取りじゃねぇか。何があったんだ?俺たちは群がっている村の人たちに話しかけることにした。


「こんにちは。何があったの?」


「ん?おぉ!アルスじゃねぇか!元気か?それにアリスとノエルちゃんも」


「「元気ですよ!」」


村長の前に群がっている中から1人の筋骨隆々な女性が現れた。

あれ?前よりもでかくなってない?肩にメロンが乗っていたがついにスイカになったか…。


「それよりもなんでこんなに騒いでるの?」


「あぁ実はな、村長が明日までに売れるものを作ってこいだってさ」


「え?なんで?」


「男と遊んでたら金が尽きたんだとさ。しかも、私たちが稼いだはずの金でな」


はーん?つまりは俺たちの儲けを1人で横取りした挙句、全部使い切ったと…なるほどなるほど。


「要は金が無くなったから、俺たちで稼げってこと?」


「そういうことになるな。やれやれ、村長なんざに任せるんじゃなかったよ」


俺たちはまず村長に作物や肉を渡す。そして、村長が月に何度かやって来る商人と交渉し、お金と引き換える。

村長がお金を受け取ったあと、全員に平等にお金を渡すというのがここでのルールなのだ。


その後のお金は商人が来た時に買い物をしたり、遠くにある街まで行ったり、人によってさまざまだ。だが、村長は受けとったお金を横領し、男に貢ぎ、俺たちに渡す金がないというのが今回の事件だ。


ったく、みんな落ち着きなよ。ね?

おい!村長、出て来いやコラ!俺たちの稼いだ金返せ!おう!斧でこの扉ぶち破ったれ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る