魔法と筋肉
爺さんはただ寝ぼけていただけで、ボケてはいなかった。長い白髪に長い白髭、顔はしわくちゃだが、背筋がすごく伸びている。大きめの服を着ているからだろうか、どれだけ筋肉がついてるかは分からない。もしかして何かやってたんじゃないのか?
「いや〜すまんかったのぉ。ワシは隣の村で村長をしておるカルウと言うんじゃ。お主は?」
「俺はアルスだ。てか、隣の村ってここから結構遠いはずだぞ?よく来たな」
「ちょっと用があっての。こっちに来とったんじゃ。で、アルスよ。あの巨木なんじゃが話せるみたいじゃな」
爺さんは真剣そうな表情でそう言い放った。釣り竿をピクピク動いてるから、多分そっちに集中しているんだろうな。
「あぁ。確かに話すように感じるな。触れたら、会話出来るからな」
「そうかそうか。そりゃええ話を聞いたわい。ついでにじゃが、アルスは魔法を使えるのかい?」
「ん?普通に使えるぞ?」
俺の返答にカルウ爺さんは喜んでいた。
「本当かの?なら、ワシに魔法を教えてくれんかの。実は魔法を使えんのじゃ」
「そうなのか。まぁ教えるくらいなら構わないが…」
「おぉ!ありがたいことじゃ!じゃが、報酬が何も出せんのじゃ…どうしたものかの〜」
爺さんは悩み始める。
おい、竿が引いてるぞ!
「爺さん、魚忘れてるぞ!」
「おぉ!そうじゃったわい!それ!」
釣り竿を持ち上げる動作をするとそこには50cmぐらいの魚がいた。しかもそれが2匹。
片手で持ち上げれるか?
「爺さん、筋力すげえな。鍛錬でもしてるのか?」
「ん?おぉ!しとるぞい。じゃがもう歳じゃから数はこなせんけどな」
「報酬はその鍛錬を教えてくれ。代わりに俺は魔法を教えるってのはどうだ?」
「交渉成立じゃな!よろしく頼むぞ!アルス!」
俺は爺さんと握手を交わす。これでヒョロヒョロボディからおさらばだ!じゃあ魔法を使えるようにするか。
「爺さん、背中触るぞ。これで魔法を使いやすくするからな」
「なんじゃと?…そんなのは知らなかった…よし!やってくれ!」
今なにか小声で言ってたな?聞き間違いだろうか?ただ覚悟はいるぞ。痛いからな!
「痛いが我慢しろよ!せりゃ!」
「何?痛ててててててて!!なんじゃ!何をする!」
爺さんは背中を丸くし、俺の手から逃げようとする。えぇい逃すかい!
「無理やり魔法を使えるようにしてるんだよ!我慢しろ!」
「痛い痛い!ちょっと待て!頼む!…から?痛いのが急になくなったぞい?なんだ体も暑いしの」
魔法を使えるようにするには魔回路というのをこじ開けないといけない。俺は2歳の時に少しずつこじ開けていたが、それでも痛かった。それが完全に開通した時、痛みが消え、体が熱を持つようになる。
なんとも不思議な感覚だ。
「うし、これで使えるぞ。次は爺さんの番だ」
「ほ、本当に魔法が使えるのか?」
「魔法の使い方は教える。早く爺さんのを教えてくれ」
爺さんは涙を流しながら、喜んでいる。そんなに喜ぶものなのか?
「ありがたい!アルスよ!教えてやる!この釣り竿を持ってみろ!これが鍛錬じゃ!」
俺は爺さんの釣り竿を持つとあまりの重さに体が川の方へ持っていかれそうになる。全力で強化魔法を使い、何とか持ち上げることはできたがそれでも重い。
何だこの釣り竿!?これを片手だと!?
「うむ!それをやっとれば
俺、まだ5歳だぞ!?
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