幼馴染の真相
「それじゃみんなで食べましょうか!」
「はい!いただきます!」
「いただきます?」
俺とノエルはお母さんが作ったキノコの串塩焼きをかじる。おぉ!キノコの旨みがすごいな!食べ応えもあるし!でも3日連続は少しキツイな。
「もぐもぐ…うん!美味い!ノエルは…って」
ノエルはキノコを口いっぱいに詰め込んでいた。
なんかこう見ると年の離れた妹を見ているような気分だ。
「ほらっノエル。口から溢れてるぞ」
「ふりふふん」
「次からは小さめに齧るんだぞ」
「はい。あ〜むっ!」
ノエル?その感じだと聞いてないな。今、飲み込んだのに大きな口を開けて食べたな?まぁ5歳だから仕方ないか。
「そうそう!実はこのキノコ、川の方で食べると美味しいのよ!食べに行かない?」
「え…?」
お母さんがそういうとキノコの食べかけ串を落とした。もったいないから落とすんじゃない!
「ノエルのお母さんたちも呼んで食べに行こうか」
「…いや」
ノエルは食べていたキノコを食べ終わると外へと出ていった。なるほど、家族に問題ありか?
「お母さん。このキノコ、何個か持っていくね。あとお母さんは村の人に軽くノエルの母に話を聞いてきて欲しい。俺はノエルと軽く歩いているから、見かけたらこっそり付いてきて」
「任せて。持ち歩けるようになにかに入れるわ。イノシシちゃんはどうするの?」
「キノコ食べさせときゃなんとかなるでしょ」
「…それもそうね!それじゃあ実行に移りましょうか!」
俺はイノシシを一撫ですると『ここで食べてるから行ってきな!家は任せろ!」という目をしていた。頼もしいやつだ。俺は中にキノコの串塩焼きが入ったカバンを背負い外に出る。
俺は辺りを見渡すとノエルの後ろ姿が見える。あの方向は…川だな!
「あっはっはっ!どこへ行こうと言うのかね!?」
俺はノエルの後を追いかける。
ノエルは俺に気づくと走り始めた。
「なっ!ヤツめ、やりおるな。鬼ごっこと行こうではないか!あっはっはっはっ!逃げても無駄だ。私は倒れぬ。何度でも蘇るさ!あっはっはっはっ!」
傍から見れば俺の方がおかしく見えるが、気にしない。これでノエルを笑かして体力を削るのだ。現にノエルはお腹を抑えて走っている。笑って走るってのはかなりきついのさ。
しばらく追いかけているとノエルは川で大の字になって寝転がっていた。ふっ、俺の勝ちのようだな。
「さぁ!鬼ごっこは終わりだ!ノエル、隠し事を言え!」
「ふー…ふー…キヒヒ…ヒィー…分かった。言うね」
ノエルは体を起こすと俺の手を引っ張り、川の方へと近づく。声はかすかに聞こえるほど近い距離へ行くとノエルは俺の手を自分の頬に当てる。
「ノエルと結婚…しよ?」
「………はい?」
俺は理解できなかった。何を言ってるんだこの子は…急に結婚とはどういうことだ?
「ママたちはこういってたの。
『好きな人と添い遂げるには暴力がいるの。もし嫌われたら、暴力を振るいなさい。好きな人が近寄ってきたら受け止めなさい。服従させたら結婚できるわ』って」
「はっ?じゃあ俺の首絞めたのって?」
「ママたちの言う通りにしたの」
「睨んでたのは?」
「ママたちの言う通りにしたの」
「おのれ!なんてことを吹き込んでやがる!」
これがノエルの残念なところ。言われたことは素直に受け止め、実行するのだ。これで俺は何度も危ない目にあっている。今回は心配事かと思ってお母さんにもお願いしたのに無駄じゃないか!
俺はノエルの頬を両手で挟む。ノエルはなにかするのではないかと勘違いしたのか目を閉じ、顔を近づけてきた。残念だが、貴様には頭突きだ!
「痛い!」
「この馬鹿者が!」
「なんで!?ママの言う通りにしたのに!」
涙目でこちらを見てきても無駄だ!この馬鹿者が!
俺はノエルから話を聞いていくうちに原因はノエルのママ以外にも問題があることが分かった。
何故ノエルが逃げるように家を出たのは俺が誘わなかったからだった。本来であれば俺から誘うはずがお母さんが誘ったことでパニックになったそうだ。なんとも人騒がせなやつだ。
お母さんはその事実を知るとノエルを叱り付け、『二度とアルスに手を出さない』と約束させた。なんとも頼もしい我が母だ。
その後、ノエルのママたちはしばらく外で会うことがなかった。何があったんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます