恐怖の幼馴染、降臨


あれから俺は水を大量に確保するとイノシシと一緒に巨木へ向かう。あの魚は勿論逃がしたぞ!

森の中へ入り、イノシシは先頭を歩いてくれているが、時折こちらを見て付いてきてるか確認してくる。なんとも愛らしい子なのだ。

歩いては撫で、歩いては撫でを繰り返しているといつの間にか巨木の近くまで来ていた。急いで巨木に触れると『何してたのよ!』と怒っていた。


「巨木さん!お待たせだ!大量のお水を持ってきたぜ!」


俺は『放出』の魔法を使う。すると、回収した水が滝のように流れる。地面に水溜まりができるが直ぐに消えてしまう。多分、この巨木が吸い取っているのだろう。『くぅ〜!染み渡る〜!』って言ってるぐらいだから乾いてたんだろう。


「まだまだあるからな!じゃんじゃん飲め飲め!」


巨木は『やったぁ!これでもっと成長できる!』と言っているようにも感じた。まだ大きくなれるのか?

1週間ほど前、村長たちはこの木が邪魔だなんだと言い伐採しようかみんなに相談していた。それを聞いたお母さんたちが村長たちに説教している。

昨日はキノコが生えなくなったらどうするのよ!責任取れるわよね!と村長の家にカチコミしたとの事だ。食に対する行動力って恐ろしいと改めて感じた。


「アルス〜!ご飯よ〜!イノシシちゃんもいるんでしょ!一緒に連れてきなさい!」


「もうお昼か…また後でな!巨木さん!行くぞイノシシ!」


「ブヒヒ!」


巨木に挨拶を済ませると俺はイノシシと一緒にお母さんのいる方へと歩きだす。途中、村長の家があったが、中からすごい音が聞こえた為、また怒られているのだろう。南無南無。


俺は我が家の前につくとある少女が仁王立ちで家の前で待っていた。


「アルス、見つけた」


「うげっ…なんでここにいるんだよ。ノエル」


ノエルは常に眠そうな不思議なかわい子ちゃんという感じだ。眠そうな目、笑ったとしても嘘のように見えてしまう不思議可愛い系だ。実は俺は苦手でもある。常に眠そうな雰囲気を醸し出す彼女だが、行動力だけはすごいのだ。


「ここにいると思ったから?」


「そうか。俺はご飯なんでな。また後でな!」


「待って」


俺が彼女の横を通り、家の中に入ろうとすると両手で首を絞めてきた。こいつ、殺す気か!?


「違う違う違う…うぅっ…」


「お腹すいたからご飯食べさせて。食べさせないならあなたをもらう」


「…ぐ…わ、分かった。俺の分を少しやるから!」


「良かった。じゃあ中に入ろ」


ノエルは俺が逃げようとすると何故か暴力的になるのだ。それがノエルの苦手なところでもある。あまり関わりたくないが、関わってこられるため逃げれないのだ。俺は倒れそうになるとイノシシが支えてくれた。


「ブブ…」


「はぁ…はぁ…イノシシか、ありがとう。お前のご飯は多めにしてもらうからな」


「ブヒヒ!?ブビィ!」


「喜んでるな!…だが…すまないが、ドアの方へ行かせてくれないか?…はぁ…足が震えて動けないんだ…」


「ブヒ!」


俺はイノシシに支えられながら、扉を開け、中へと入る。俺はお母さんに呼ぶと急いで走ってきて、抱っこをする。


「どうしたのって大丈夫!?何があったの!?」


「ちょっと…疲れちゃって…」


「ノエルちゃんが何かしたの?」


「それは…」


「言えないのね…。けど、次は許さないわ。私のアルスになんてことを…あの子には同じめにあわせないとね?」


お母さんは憎しみの籠った目でノエルを見つめていた。ノエルはどうしたの?というような顔をしていた。ご飯時に空気を悪くするのはやめてくれ。


「今日、探りを入れてみるから何かあったらお願いできる?お母さん」


「…えぇ。任せて。他の人にも一応、監視は頼んでおくわね。さぁ!ご飯にしましょう!」


お母さんはすぐに切り替え、ご飯を食べる準備をする。ありがとう、お母さん。


「イノシシ、おいで。ご飯にしよう。あっお母さん、イノシシのご飯多めにお願いできる?」


「任せて、今日はキノコの塩焼きよ!」


お母さんのご飯は美味しい。けど、1日3食、キノコはきついんじゃ…。俺、なんか作ろっかな。

俺とお母さんがワイワイとしてる中、ノエルは俺の方をずっと睨みつけていた。

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