第20話 家畜化できないかな


「……信じられません。複数人の同時長距離転移なんて……。セナさんって一体何者なんですか?」


「普通よ、普通。ちょっとコツ・・を知っているだけで」


「コツって。コツだけであんな大規模魔法を使えるわけが……」


「ミーシャだって実績解除すればできるようになると思うわよ?」


「じっせきかいじょ……?」


 そんなやり取りをしながら向かった村長の家は、言い方は悪いけど貧相な建物だった。いかにも寒村にありそうなボロさ。だけど、周りの家よりは数段立派なのでやはり村長の家ってことなのでしょう。


 家の中で村長から聞いた話によると、ゴブリンたちは山の中の洞窟に巣を作り始めたらしい。

 運良く初期の頃に発見できたので自分たちで間引こうとしたのだけど、多勢に無勢。村一番の狩人がケガをしたところで冬への蓄えを切り崩し、冒険者ギルドへの依頼を決意したらしい。


「日々を慎ましやかに生きる人々の幸せを奪うとは……ゴブリンどもめ! 許せないわね!」


 義憤に駆られた私が拳を握りしめていると、


「顔に『肉』って書いてあるな」


「瞳にも『肉』って書いてあるな」


「お肉目当てですね」


「肉欲女」


 私はそろそろ雑な扱いに泣いても許されるんじゃないだろうか? 私は騎士爵じゃぞー。雷光じゃぞー。偉いんじゃぞー。


 それはともかくとして。ゴブリンが巣くっているという洞窟の場所は分かったので、さっそく森へと入り、洞窟を目指す。


 道中、冒険者としての先達であるニッツたちが色々と教えてくれる。


「ゴブリンは巣作りを終えると本格的な繁殖に入って一気に数が増えるんだ。あの村人たちはそうなる前に何とかしたかったんだが、自分たちでは無理だからギルドに頼んだってところだな」


「へぇ。噂には聞くけど、そんなに繁殖力が高いんだ?」


「なんでも三ヶ月くらいで生まれる上に、妊娠中も別の子供を妊娠できるらしい。しかも一年中繁殖期だから、安心して子育てができる環境が出来上がってしまうと一気に増えてな……。村一つ、町一つ滅びても不思議じゃないんだ」


「凄いのねぇ」


 むかーし、ゴブリンの群れをやっつけたことがあるけど、もしかしたら村や町が飲み込まれる事態になりかねなかったのかもね。


 しかしそうか。繁殖力が強いのか。


「……家畜化できればお肉食べ放題なのでは?」


「止めろ」

「止めろ」

「止めてください」

「止めるべき」


 四人から止められてしまった。半分冗談なのに。……半分は本気だけどね。




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