第15話 腕試し
ギルドの訓練場は中庭にあった。
訓練場をぐるっと三階建ての建物に囲まれているので、多少斬撃を飛ばしても魔法を飛ばしてもギルドの建物が『壁』になり、周辺に被害が行かないようになっているのでしょう。
「いや、建物の窓から自由に訓練風景を見学できるようにだが?」
「さらっと『斬撃を飛ばす』とか言うなよ……」
「セナさんならやりそうですよね。実際攻撃魔法は飛ばしていますし」
「セナならやりかねない」
暁の雷光のみんなが『セナー! がんばれー!』と熱い声援を送ってくれていた。照れるぜ。
そして、
「ギルマスが勝負を挑むとは……」
「あの女、只者じゃないのかもしれねぇな……」
先ほど喧嘩を売ってきた二人組が訳知り顔で腕組みをしていた。解説役かな?
ギルドの中庭にある訓練場には、そんな二人組の他にも多くの冒険者たちが集まってきた。訓練場の中だけじゃなく、宿として使われているらしい二階や三階の窓からも声援が飛んできている。
……そう、声援。
私を応援する人もいれば、ギルマスを応援している人もいる。さっきの騎士団と違うのは、下品な声を上げる人間が一人もいないってことだ。
「ほぉ、あの女か? ギルマスが腕試しを希望したってのは」
「見た目は華奢だが、中身はとんでもないんだろうな」
「なにせあの脳筋――じゃなくて、ギルマスが直接動いたんだからな」
「噂じゃ、あの女が例の『雷光』らしいぜ?」
「マジかよ? 若すぎねぇか?」
「だが、『雷光』は銀髪だって話だったよな?」
「はぁん、そりゃあギルマスも腕試しを希望するってもんか」
「俺もできねぇかなぁ?」
「止めとけ止めとけ、命がいくつあっても足りねぇぞ」
訓練場のあちこちから話し声が聞こえるけど、やはりみんな好意的だ。むしろさっきの喧嘩を売ってきた二人組が異端だったんじゃないかって思えるくらい。
……ちなみにその二人組は相変わらず腕組みをしながら最前列をちゃっかり確保していた。なんか意外と面白い人たちなのかもね?
(う~ん、中々にいい雰囲気……)
やっぱり私は騎士より冒険者の方が向いているのかも。
「うっし! 始めるか!」
ギルマスが嬉しそうな声を上げた。もちろん、私が刀を取り出すのをちゃんと待ってから。
彼の武器は、
興奮を抑えきれないようにギルマスが両手の拳を打ち鳴らす。――聞き慣れない金属音。おそらくは希少金属であるミスリルとかヒヒイロカネ、あるいはギルマスという立場ならオリハルコンでもおかしくはないかもしれない。
よし、腕試しを望んだのはあっちなのだから、容赦なくいきましょうか!
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